国会質問

2015年03月27日

高校の就学支援金、奨学給付金―複雑な申請手続きの改善を(文科委員会)

○大平委員 日本共産党の大平喜信です。
 今年度から始まった奨学給付金制度についてお聞きをいたします。
 今年度の入学生から、公立高校授業料の無償化、そして私立高校への授業料補助の就学支援金制度が見直され、所得制限の導入と私立高校でc0349386_08123910の低所得者層への加算、そして奨学給付金制度が導入をされました。
 その結果、新制度が適用される新入生と旧制度が適用される二、三年生と、二つの制度が併存することになり、特に私学では、全ての申請者を年収によって五段階に分けなければならず、大変複雑で膨大な作業の中で、現場はこれまでになかったさまざまな苦労や混乱が生じています。
 新年度を目前にし、新入生を持つ保護者への申請の説明会や手続も現在進行形で順次行われていると思いますが、現場から寄せられている状況も御紹介しながら、特に、奨学給付金の申請と手続にかかわって、改善が必要だと思われる幾つかの点についてお聞きいたします。
 今年度入学した新入生とその保護者の皆さんは、この新制度のもとで、一年間に三度の申請手続を行わなければなりませんでした。まず就学支援金の申請手続で四月に一回目、六、七月に二回目の作業が求められ、さらに九月ごろに、今度は奨学給付金の申請手続を、つまり三回目の手続をしなければなりませんでした。
 保護者にとっては、制度の複雑さにより、まず理解するのが大変であることに加えて、特に、パートなどをかけ持ちし、夜遅くまで働いている世帯の保護者にとっては、書類を熟読して申請書を記入することや、平日の昼間に何度も所得証明書をとりに行くなど、必要書類を準備するのがかなり大変です。
 その結果、特に三度目の手続となる奨学給付金について、その手続の煩雑さから申請を辞退するケースが生まれたという報告も、各都道府県の担当者の皆さんから寄せられています。
 まず、下村大臣にお聞きをいたします。
 今年度新たに創設された奨学給付金制度が現場でどのように受けとめられ、活用されたのか、その成果と、また課題についてどのように感じておられるか、お聞かせください。
    〔委員長退席、義家委員長代理着席〕

○下村国務大臣 家庭の経済状況にかかわらず、学ぶ意欲と能力ある全ての子供が質の高い教育を受け、一人一人の能力、可能性を最大限伸ばし、それぞれの夢にチャレンジできる社会を実現することが重要であると考えます。
 高等学校段階においては、御指摘のように、平成二十六年四月より、高校無償化制度の見直しによりまして、低所得世帯を対象とした返済不要の高校生等奨学給付金、給付型の奨学金制度、これを創設いたしました。
 この給付金の創設によりまして、就学支援金による授業料の支援に加え、教科書や教材、学用品、通学用品に要する費用など授業料以外の教育費にも支給対象としたところでありまして、また、多子世帯においては、重い教育費負担を軽減するため、給付額をさらに手厚くするというふうにしたところでございます。これにより、低所得世帯の経済的負担は一層軽減されているというふうに認識しております。
 一方、御指摘がありましたように、今年度から創設された事業であるということで、事務手続については、都道府県、学校へのヒアリング、関係団体と意見交換などにより多方面からの御意見をいただき、実態や課題の把握に努めてまいりましたが、その中で、所得を確認すべき保護者を特定する際の手続について、プライバシー等への配慮、それから学校現場の事務の簡素化、これらについては多くの御要望をいただいたところでありますので、今後、改善に努めてまいりたいと思います。

○大平委員 給付制の奨学金制度は私たちも一貫して求めてきましたので、本当にこの制度が、受けられるべき人全員にきちんと行き渡るように、手続の煩雑さを理由に辞退する人が生まれないように、できるだけ申請の簡素化をすることが求められていると思います。
 一つずつ確認をしていきますが、今年度の就学支援金と奨学給付金の申請用紙を見ましたが、ほとんど同じ様式でした。先ほども御紹介したように、一年で三回も同じような手続をしなければならなかったわけですから、手続の回数を減らしてほしいというのは現場の切実な願いなわけです。この制度の保護者への案内や申請用紙を一枚にして、提出すべき必要書類も一本化できれば、随分と手続が簡素化されると思います。
 そこでお尋ねしますが、来年度の奨学給付金の申請手続は、いつごろ行う予定なのか決まっているのでしょうか。私は、就学支援金の六、七月に行う二回目の届け出のときにあわせて奨学給付金の申請もできれば簡素化されると思いますが、いかがでしょうか。

○小松政府参考人 高校生等奨学給付金事業につきましては、この申請時期につきましては、都道府県事業であることから、各都道府県において定めているという仕組みでございます。
 文部科学省といたしましては、でき得る限り早期の給付が望ましいと考えておりますので、その観点から、来年度、この四月から始まる分ですけれども、につきましての申請時期につきましては、でき得る限り早期にということをお願いすることにしておりますが、現状から見ますと、大体七月から十月ごろで募集を行うことをお願いするということになるかと思います。
 なお、こういった中で、都道府県の御判断によりまして、就学支援金の二回目の手続とあわせて募集を行うことは可能でございます。各都道府県において、それと事務負担等を考慮しながら、適正に実施されるということになっていくかと考えます。

○大平委員 都道府県の担当者の方からは、悲鳴のような訴えが今年度たくさん寄せられています。新潟の担当者からは、煩雑な業務と人手不足とで心身ともに疲労が重なり大変である、過労死するかもしれない、こんな訴えも寄せられました。学校現場にとって、そして保護者にとってどうすることが本当にふさわしいのかということを基準に、知恵も出し合っていかなければならないというふうに思っています。
 さらに、申請簡素化の問題にかかわって、手続のたびに提出が求められる課税証明書についてなんですが、今年度、これは原本でなければならないという自治体が少なくなかったわけです。そうなると、その都度平日の昼間に役所にとりに行かなければならず、この点でも保護者からの苦情が寄せられています。
 コピーではいけないのかなどの声が寄せられていますが、これはどのようにお考えでしょうか。

○小松政府参考人 都道府県の中には、独自に実施する授業料減免事業等があって、課税証明書を原本で提出するというような仕組みにしているところもあるということは確かに伺っております。
 就学支援金と奨学給付金の申請に当たっての必要となる課税証明書の調製でございますけれども、生徒、保護者の負担を軽減する観点から、文部科学省としては、都道府県の判断によりまして、コピーを提出することとしても差し支えないと考えておりまして、その旨周知しております。
 この就学支援金の事務処理要領に、「複写としても差し支えない。」ということで明記をするところでございます。
 それから、平成二十六年度の就学支援金の手続を見ますと、公立高校で三十七県、私立高校で三十四県が課税証明書はコピーでも可というふうにいたしておりますので、文部科学省としては、こうした都道府県の事例を紹介しながら、生徒、保護者の手続に係る負担が軽減されますように、引き続き、この手続の関係を周知してまいりたいというふうに思います。

○大平委員 コピーでいいとの答弁でした。
 これは、細かいようなんですけれども非常に大事な問題で、本当に仕事や家事、育児に忙しくしている保護者の皆さんにとっては、二度も三度も平日の昼間に仕事を休んで役所に書類をとりに行かないといけないわけですから、これはぜひ周知徹底をしていただきたいというふうに思います。
 一部の県では、今年度の事例で、昨年の四月に入学した新入生が、三度の申請手続を行った上で就学支援金の支給は十一月に、奨学給付金の支給についてはつい一カ月前のことし二月に行われるなど、申請であれだけ大変な思いをしたのに支給はずっと後、忘れたころに突然行われるというそんな状況だったわけです。教育費の負担を軽減するという趣旨が忘れ去られるような、今年度のような状況ではまずいわけです。
 それも申請手続の煩雑さによって事務作業が膨大になっていることが最大の理由だと思いますので、この支給時期を早めていくためにも、申請手続の簡素化は、引き続き、知恵も出し合いながら進めていかなければならないと思います。
 次に、申請用紙の内容についてお伺いいたします。
 今年度の就学支援金と奨学給付金の申請用紙を見ましたら、高校生たち、そして保護者の皆さんのプライバシーに踏み込む設問があるのが私は大変気になっています。
 就学支援金の用紙はもう配られていると思いますので奨学給付金についてお尋ねをするんですが、一つは、児童相談所や児童福祉施設に入所している高校生がその旨をチェックするようになっている点です。
 この項目は私は不必要だと思いますが、来年度に向けて文科省はどのようにされようとしているのでしょうか。

○小松政府参考人 お答えいたします。
 高校生等奨学給付金事業につきましては、都道府県事業でございまして、申請用紙については各都道府県において定めるという前提はございますが、文部科学省としては、都道府県の参考となるようにひな形を示しているところでございます。
 それで、これは今年度創設された事業でございますことから、事務手続について、先ほど大臣からも御説明がございましたように、都道府県、学校へのヒアリング、関係団体との意見交換など、さまざま各方面から御意見をいただいて実態や課題の把握に努めております中で、所得を確認すべき保護者を特定する際の手続について、プライバシー等への配慮、学校現場の事務簡素化についてさまざまな御要望をいただいたところでございます。
 現在、来年度の予算ということでございますのでまだ配られておりませんけれども、こうした状況を踏まえまして、来年度につきましては、就学支援金の申請書でもそのようにさせていただきましたが、児童相談所に入所する生徒さんに入所している状況を書かせる欄は削除したものをひな形といたしまして、今後都道府県に対して周知をする、こういうことを考えて予定いたしております。

○大平委員 「扶養親族等の状況について」の欄で、世帯員の続柄、氏名から職業まで書かせることになっている。この件についてはどのような見解でしょうか。

○小松政府参考人 お尋ねの点でございますが、今予定しておりますものでは、来年度は、先ほどお話しいたしましたひな形の、私どもからの参考の扶養親族の欄につきましては、まず、祖父母の記入、これを不要とするようにいたしまして簡素化を図るというふうに考えておりますが、一方、家族構成につきましては、高校生等に十五歳以上二十三歳未満の扶養されている御兄弟、姉妹の方がいらっしゃる場合には、この当該世帯への高校生等奨学給付金の納付額が増額されるという仕組みがございますので、この点につきましては、御兄弟あるいは姉妹の方々につきましては、最低限、続柄、それから氏名、生年月日などを確認する必要があると思います。充実のためということでございます。

○大平委員 祖父母は書かなくていい、きょうだいがいるかどうかの確認のために必要だということでしたので。最低限ということもありましたが、今年度の用紙では、誤解される方も含めて少なくない方が、同居家族全員を書かなければならないのかとか、それに抵抗があって申請をしないという方もいたわけです。きょうだいがいるかどうかの確認だけなら、こんな様式はやめて、もっと簡素化するように求めたいと思います。
 さらにお聞きしたいのは、一人親世帯の個人情報にかかわる記述についてです。
 申請用紙の「保護者等の収入の状況について」という項目の中で、保護者が一人の場合は、その理由を詳しく書かせるようになっています。
 この点について、ほとんどの保護者が無記入で提出、学校で生徒に聞いたり保護者に電話したりするのもためらわれるので削除してほしい、あるいは、プライバシーに触れることを聞くことについて、調査に協力しないのならお金は出しませんよということになるわけで、これはいかがなものだろうかなど、現場からたくさんの苦情の声が寄せられています。
 私自身も、まさに、私が高校二年生のときにわけあって両親が離婚をしました。これから自分の人生はどうなっていくのだろうかと本当に動揺をし、大変なショックを受けたことを今でも覚えています。そんなときに学校から、あなたの家庭は何で一人親なんですか、いつ離婚したのですかと聞かれるわけですから、本当に、心に受けた傷に塩をすり込むようなひどい仕打ちだと私は思います。そして、こういう家庭こそ、こうした就学支援金、もちろん奨学給付金の申請をされるわけです。
 これはぜひ大臣にお聞きしますが、これは絶対にやめてほしい、削除してほしいと思いますが、いかがでしょうか。

○下村国務大臣 今年度から実施している新制度の手続事務については、都道府県、学校へのヒアリング、関係団体と意見交換などにおきまして、各方面から、所得を確認すべき保護者を特定する際の手続についてプライバシーに配慮するよう、御意見をいただきました。
 これを踏まえ、文科省としては、平成二十七年度の就学支援金の手続から、従来は、保護者の所得を確認する際に、一人親世帯である場合などの家庭の状況についても記述式で詳細に申告を求めていたものを、プライバシーに配慮した簡便なチェックボックス式に改めることといたします。
 高校生等奨学給付金の申請用紙は各都道府県で定めているところでありますが、就学支援金の手続と同様に、プライバシーに配慮した簡便なチェックボックス式に改めるよう、都道府県に周知いたします。

○大平委員 言うまでもありませんが、申請用紙の文科省のひな形というのは、一度都道府県におろしてしまえば、それで全国の大半の高校がそれに縛られてしまうわけです。ですから、今年度の反省もしっかり踏まえて、慎重に、念入りに作成するよう重ねて求めておきたいというふうに思います。
 私は、こうした現場で生まれている保護者の混乱と学校窓口の煩雑さの最大の要因は、授業料無償化に所得制限を導入したことだと考えています。
 そもそも、二〇一〇年度に導入された公立高校授業料無償化、それに伴う私立高校生への授業料補助の就学支援金制度は、格差と貧困対策だけではなくて、学びを社会全体で支えるという理念に基づくもので、日本国憲法第二十六条が定める、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」このことの実現でした。
 所得制限の導入は、これらの理念からの重大な後退にほかなりません。就学支援金の加算にせよ、奨学給付金の創設にせよ、本来は、教育予算を増額することで対応すべきものだと考えます。
 所得制限の導入を中止し、高校無償化を復活させるべきだと考えますが、下村大臣、いかがでしょうか。

○義家委員長代理 質疑時間が過ぎておりますので、大臣、簡潔にお願いいたします。

○下村国務大臣 見直し前の制度では、依然として、授業料以外の教育費負担は大きく、公私間の授業料負担の格差も大きいことから、低所得者層、そして私立学校の生徒への一層の支援が必要であるということから、文科省として、財源に限りがないのであればこれは所得制限を設ける必要はもちろんないわけでありますが、現在の厳しい財政状況のもとで、その限られた財源を有効に活用する観点から、新しい高等学校等就学支援金制度においては、所得制限を設けて、その捻出した財源を低所得者層支援や公私間格差の是正に充てることとしたものであります。
 今後、教育における財源確保、教育投資については、教育再生実行会議等でぜひ取りまとめて、国民的な議論に資するように進めていきたいと思います。

○大平委員 社会全体で青年の学び、成長を保障するため、高校無償化を復活することを重ねて求めて、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。