コミュニティースクールの強制はやめよ(3月10日文部科学委員会)
衆議院会議録情報 第193回国会 文部科学委員会 第4号
○大平委員 日本共産党の大平喜信です。
私は、昨年の臨時国会で、通級指導教室に関する財務省、財政審の主張に対しての質疑を行いました。松野文科大臣は、その中で私の質問に答えて、「通常の学級に在籍しながら障害の状態に応じた特別指導を受ける児童生徒は、十年間で二・三倍に増加をしております。」「個に応じた必要な指導が受けられていない児童生徒が相当数いる実態を踏まえれば、一刻も早く対応することが必要だと考えております。」と述べられました。
大臣、これは間違いありませんね。確認です。
○松野国務大臣 そのように申し上げました。
○大平委員 私も全く同じ認識であります。
全国どこでも教員が足りない。先生たちは、過労死ラインで働いても、授業準備の時間さえまともに確保できない。少人数学級は国民の強い要求であり、発達障害、外国人の子供の増加を考えても、教員増が急務な課題だと、教職員、保護者らの切実な実態と訴えが今度の義務標準法の改正につながった。私たちも求めてきたことであり、この方向性には賛成をしております。
しかし、先ほど来議論がありますように、今度の法案では、十年かけて、加配定数の約六万四千人の約三割を基礎定数化するとされていますが、なぜ十年もかけなければならないのか。もっとペースを上げるべきだと私は訴えたい。
私は、昨年の臨時国会で、言葉や聞こえに障害を持つ子供さんを持つ親の会、全国ことばを育む会の方のお話を紹介いたしました。通級指導教室の設置数と先生の数が圧倒的に足りない、通級させたいが、他校通級で、距離と時間を考えるととても無理だという実態を紹介いたしました。
この会が発行している会報を読みますと、通級に通っている子供たちや通わせている親御さんたちの、教室があって本当によかった、こういう思いがこもごも語られておりまして、大変胸を打つわけです。少し紹介したいと思います。
ことばの教室の卒業生のKさん。
私は、幼児教室から小学校、中学校と十数年間、ことばの教室とともに過ごしてきました。ことばの教室がもしなかったら、学校生活は灰色で楽しくなかったと思うし、きれいな発音も獲得できず、勉強の楽しさを理解できずに終わったと思います。耳が不自由な私にとって、いろいろな意味で助けられてきたんだなと心から感謝しています。
まさに通級は、Kさんにとって生きる力そのもの、これを育んだと言っていいというふうに思います。
親の立場として、山口県の通級教室に子供を通わせているお父さん、Yさん。
通級指導教室は、現在は月に一回と、以前より回数は減りましたが、先生と子供の会話や指導方法を拝見すると、家庭では聞いたことのない子供の気持ち、好きなことや興味のあることについて子供みずからが発言するという光景を目にすることがあり、通級指導教室が気持ちの整理や安らぎの場となっていることを痛感します。現在は校外通級でお世話になっていますが、校外であるために、送迎ができず、通級を諦める保護者もいらっしゃるとお聞きしました。共働きの家庭や時間の制約がある中で、子供の通級は簡単ではありません。全ての学校に通級指導教室が設置されていれば、この課題をクリアできると思います。
こういうお話でした。
文部科学省に改めて伺いたいと思います。
実際に通級を利用している子供たちが、冒頭紹介した大臣の答弁にもあるように、十年間で二・三倍化しているとのことでしたが、先ほど紹介したお父さんの声にもあるように、あるいはこの間急速にふえている発達障害などの子供たちも含めて、通いたいけれども通えない子供たち、通級を希望しているが、条件がなく諦めざるを得ない子供たち、いわゆる待機児童がどのぐらいいるのかについて、文部科学省としてつかんでおられるでしょうか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
通級による指導を希望しても受けることができない児童生徒の数についてのお尋ねでございますが、文部科学省として、その数自体の把握はしておりませんが、文部科学省が通級による指導の加配教員を配分するに当たりまして市町村から御要望いただく教員数がございまして、それに対して実際の配分は約八割ということなので、残り約二割分が教員数を配分できないということでございまして、通級による指導を希望しても受けられない児童生徒がその意味で相当数いるということは十分認識しているところでございます。
○大平委員 相当数いる、そういう御答弁でした。
ぜひとも、大臣、自治体とも協力して、今度の法改正、基礎定数化の機会に、こうした待機児童の数もつかんでいただきたいというふうに思います。
改めて、大臣にお伺いしたいと思います。
先ほど私が紹介した声、これがまさに、大臣自身も御答弁されているとおり、一刻も早く対応することが必要なリアルな実態だというふうに思います。現状は約半数が他校通級となっており、先ほども申し上げました、そのもとで、通いたくても通えない子供たちがたくさんおられます。ぜひ、今度の法改正、基礎定数化の機会に、全ての学校に通級指導教室を設置できるよう、計画的に見通しを持って進めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○松野国務大臣 自分の学校内で通級による指導を受ける自校通級と他の学校で通級による指導を受ける他校通級の割合は、直近の調査ではほぼ同程度となっています。
自校通級は、児童生徒の移動の負担が少なく、通常の学級の担任との連携もとりやすいという利点がある一方で、通級による指導を受けていることを知られたくない生徒にとっては、他校通級の方が心理的な抵抗感に配慮しやすいとされます。また、弱視や難聴など、指導に当たり指導の専門性や特別な教材、備品等が必要となる場合には、特別支援学校も含め、そうした環境の整った学校に他校通級することで、より適切な指導を受けることができます。
文部科学省としては、教員が児童生徒のいる学校に赴いて指導を行う巡回指導の形態も含め、各学校や児童生徒の実態を踏まえて効果的な実施形態を選択することが重要であると考えております。
今回の基礎定数化は、実施形態を問わず、通級による指導を受ける児童生徒数を教員定数算定の基礎とするもので、より柔軟に実施形態を決定することができるようになると考えており、児童生徒にとって適切な実施形態を選択するよう各教育委員会に促してまいりたいと考えております。
○大平委員 今、他校通級と自校通級がちょうど半数なんですね。今大臣、他校通級の意義といいますか、自校通級では、自分が通っていることを知られたくない、そういう児童にとっては意味があるという御答弁もありまして、柔軟な対応ということがありました。
しかし、私が聞いた保護者の声の多くは、やはり、山口の話ですけれども、一時間半かけてその教室に週一回通っている、一時間の授業を受けて、一時間半かけてまた帰ってくる、もっと近くに教室があったら、こういう声が多く寄せられている、そういうこともぜひ受けとめていただいて、今度の法改正を機に、自校通級をもっと広げるということを含めて進めていただきたいと思います。
通級による指導に関して、もう一問伺いたいと思います。
今度の法案で、通級による指導のための教員の配置を基礎定数として、児童生徒十三人に一人という配置にするとのことになっています。
文科省の資料にもありますが、都道府県別の通級指導に携わる教員一人当たりの児童生徒数を見ると、現状で十三人よりも少ない児童数で配置している都道府県が十四ある、こうした県が、今度の法改正によって現在の教員の配置よりも減ってしまうのではないか、こういう不安の声を聞いているんですが、そういうことは起こらないのかどうか、確認したいと思います。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
今回の通級指導に関する基礎定数化でございますが、あくまでも国費ベースで、児童生徒数対教員の割合につきまして十三対一という形で基礎定数化するものでございます。
これは、必ず各自治体が児童生徒数対教員の割合を十三対一にしなければならないというわけではございませんで、むしろ、地方単独でこれまで措置されているものも措置し続けていただければ、当然のことながら、この十三対一よりもよい割合で教職員が配置されるということになるわけでございます。
御指摘のとおり、一部の自治体におきましては、結果として十三対一よりも配置率がいい状態であるという自治体がございます。これにつきましては、今回の基礎定数化によって、国が国費ベースの教員の配置を充実するということでございますので、引き続き、これら自治体において、地方単独措置もきちんと措置し続けていただければ、よりよい状態の配置率になるということでございます。
なお、今回の基礎定数化をした後につきましても、現在の基礎定数の一割につきましては、僻地とかあるいは対象児童生徒の少ない障害種への対応のために加配措置を引き続き措置するということでございまして、こういったものも活用しながら、今後、必要な対応をしていただければと考えております。
○大平委員 ありがとうございます。
今度の法改正でよりよい方向に進む、そういう御答弁だったと確認したいと思います。
障害を持ったお子さんを持つお父さん、お母さんの御苦労というのは、私たちが見えていること、見えていないことを含めて本当にたくさんあるというふうに思います。そんな中で、週に一回でも、子供たちが通級に通い、我が子が満面の笑顔になって帰ってくる、親子にとってこの通級がかけがえのない心のオアシスとなっている、そういう皆さんが、今度の法改正、基礎定数化を本当に期待を持って見ておられるというふうに思います。大臣からも、ぜひとも力強いメッセージを引き続き発していただきたいというふうに訴えたいと思います。
続いて、地教行法改正案の学校運営協議会の規定の見直しについて伺いたいと思います。若干通告をした順番と前後がありますので、よろしくお願いしたいと思います。
本法案では、現行では任意設置とされている学校運営協議会の設置を努力義務化して設置を促すことになっております。現状は、都道府県、市区町村でかなり違いがあり、ほとんどの学校で設置されている県もあれば、ほとんどやっていない、そういう県もある。例えば、山口県のようにほとんどの学校で設置されているところもあれば、福井県のように一校も指定のないところもあったりします。
では、ほとんどの学校で学校運営協議会が設置されている山口県、果たしてうまくいっているか、実際に取り組んでいる学校の教職員の皆さんはどう感じているのか、少し紹介したいと思います。
教職員組合が調べたアンケートによれば、コミュニティースクールについてどう感じているかとの設問に、プラス面が大きいのでさらに拡大をと答えた教職員は八・六%、一割にも満たないのであります。一方で、縮小をとの答えが四八・二%、半数近くに上ります。その多くの先生が、負担が大きいことを理由に縮小をというふうに答えています。実際にかかわっている先生方にお話も聞きましたが、例えば、夜や土日にもこのための会議が入る、手当もなく、ほとんどボランティアだ、こういうことをおっしゃっておりました。
大臣、こうした教職員の皆さんの声や実態をどう受けとめられるでしょうか。学校運営協議会の役割として、学校を支援していくということが今度の改正で新たに加えられているのに、今でさえ多忙化をきわめる教職員の皆さんの負担をふやすということでは本末転倒になると思いますが、いかがでしょうか。
○松野国務大臣 平成二十六年度に文部科学省が実施した教職員の業務実態調査では、教員が高い負担感を抱いている業務として、保護者、地域からの要望、苦情等への対応や地域との連携に関する業務などが挙げられているところであり、教員が地域への対応に困難さを感じていることがその勤務負担の一因となっていることが明らかになっています。
一方で、学校運営協議会については、その設置により、学校が地域住民や保護者と教育目標を共有し、その理解、協力を得ながら学校運営を行うことが可能となること等が中央教育審議会答申においても指摘をされています。
実際に、協議会を置く学校の校長に対する意識調査の結果においても、地域が学校に協力的になったとの回答や、保護者や地域からの苦情が減ったとの回答が見られることから、協議会の設置を通じた学校と地域の関係の円滑化による教員の負担軽減への効果がうかがえます。
このため、協議会を設置することは、むしろ教員の勤務負担の軽減の観点からも有効であると考えており、文部科学省としては、そうした効果をさらに多くの学校にもたらされるよう、設置の促進を図ってまいりたいと考えております。
○大平委員 大臣は、教職員の勤務負担の軽減がこのコミュニティースクールによって図られる、今そういう御答弁でしたが、私が聞いている実態とやはりかけ離れていると感じずにはおられません。
先ほど大臣御紹介があった、文科省が二〇一五年に委託をして行った調査、コミュニティ・スクールの実態と校長の意識に関する調査、この数値を御紹介されたというふうに思うわけですが、文科省に伺いたいと思います。
教職員の皆さん、多忙化の中で、何よりも子供と向き合う時間がとれないというのが先ほど来の議論の中にもありました。今度のこの校長意識調査の中にもそういう設問がございます。教員が子供と向き合う時間がふえたと答えている校長先生がどのぐらいいるでしょうか、お答えください。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
委員お尋ねのコミュニティースクールの成果に関する校長意識調査の項目のうち、教職員が子供と向き合う時間がふえたと回答した校長の割合は、全体で一七%でございます。
○大平委員 これは、複数回答で答える形式になっているにもかかわらず、教職員が子供と向き合う時間がふえたと答えている校長先生は一七%、二割にも満たないのであります。いろいろな設問がある中で下から二番目、下位から二番目という状況になっている。
私は、教職員の皆さんが何よりも求めているのは、定数改善など条件整備であり、業務改善だ。学校運営協議会があろうとなかろうとこの定数改善はやらなければならないわけですが、大臣に重ねてお伺いしたい。
少なくとも、これを進めるというのであれば、それが賄えるだけの条件整備、業務改善を行うことは最低限の責任だというふうに考えますが、いかがでしょうか。
○松野国務大臣 平成二十六年度に公表された中学校教員を対象としたOECD国際教員指導環境調査の結果等において、我が国の教員が長時間労働となっている実態が示されております。
文部科学省としては、教員の業務負担軽減を図ることは喫緊の課題であると認識をしており、二十カ所程度の重点モデル地域を指定し、学校現場の業務改善を加速するためのプロジェクトを開始、部活動の適正化の推進、業務改善等に知見のある有識者や教育関係者等を業務改善アドバイザーとして派遣する仕組みの創設などを柱とする学校現場における業務の適正化に向けた取り組み方針を本年一月に発表したところであります。
あわせて、教職員定数についても、義務標準法の改正により、学校現場における喫緊の課題に対応するための指導体制の充実が図られるものと考えています。
文部科学省としては、教員が子供と向き合える時間を確保し、教員一人一人が今まで以上に誇りとやりがいを持てる学校現場の環境を実現するため、学校運営協議会を推進するとともに、学校現場における業務の適正化と学校指導体制の充実に努めてまいりたいと考えております。
○大平委員 条件整備を抜きに現場は対応できないことを重ねて強調しておきたいと思います。
同時に、教職員の皆さんがなぜ学校運営協議会を負担に感じているのか、私は、教職員の皆さん自身が当事者意識を持てないことに背景があるんじゃないかというふうに思うんです。学校現場が抱える課題や、目の前にいる子供たちとどんな学校を一緒になってつくっていくのかという議論でなくて、教育委員会が進める取り組みを何か上からやらされている、そんな気持ちがあるから負担に感じるんじゃないか、そんなふうに思います。
私たち、学校運営協議会の制度化の際にも取り上げたんですが、この協議会には、学校の校長、教職員を協議会のメンバーとして明文では規定しておりません。しかし、大臣、学校の当事者である校長先生はもちろんですが、教職員の皆さんが協議会の一員として参加することは大切なことだと思いますが、御所見を教えてください。
○松野国務大臣 地域住民や保護者など、学校運営の仕組みの外にいた者の意見や知見を学校運営に反映させるという学校運営協議会の趣旨に照らせば、外部性を重視する観点から、校長等の教職員は協議会の外部に位置づけることが基本となるものと考えております。
他方、協議会においてその学校の教育課程等についての基本的な方針について検討を行うに当たっては、協議会の方針を学校運営の責任者として具体化する立場にある校長の意見を求めたり、教科指導の専門家としての教員の意見を求めることで、より実効的な協議が行える場合もあるものと考えられます。
実際に教職員が協議会の協議に加わっている例も多数に上っていることから、文部科学省としては、例えば教職員の任用に関する意見について協議する場合には教職員に議決権を持たせないこととするなど、一定の外部性を確保することは必要と考えておりますが、どのような者を委員とするかは、最終的には教育委員会の判断によるものと考えております。
○大平委員 地域と学校の連携ということでありますから、外部の人たち、地域の人たちというだけじゃなく、やはり何より学校の当事者である教職員の参加ということは大いに進めていくべきだ、このことも重ねて申し上げておきたいと思います。
それと加えて、やはり何よりそこで学ぶ子供たちが、こうした学校運営に対する意見を申す場、そこに大いに参加して意見表明していくということも極めて重大だということも重ねて申し上げておきたいと思います。
時間がありませんので、最後、一問だけ大臣にお伺いしたいのは、今度の法改正で危惧をしているのは、学校運営協議会のみが完成形であり、すばらしい形態だからということで、今、全国で行われているさまざまな取り組みもみんなこの形態に移行していくべきだと上から押しつけられるんじゃないか、こういうことを危惧しているわけです。大臣、こういうことはないのかどうか、お答えください。
○松野国務大臣 今回の改正案では、複雑化、多様化する学校の課題に対応するためには、学校と地域の組織的、継続的な連携体制を構築する必要があるとの認識から、学校運営協議会の設置が一層促進されるよう教育委員会に対して協議会の設置努力を課すこととしております。
この趣旨は、各教育委員会において、協議会が有効に機能するために必要な学校と地域の信頼関係の構築や、関係者の理解増進等の手順を踏みつつ、漸次、協議会の設置に向けた取り組みに努めていただくことを意図するものであり、地域の実情にかかわらず一律に協議会を置くよう義務を課すものではありません。
文部科学省としては、法案が成立した場合には、この趣旨に誤解を生じることがないよう丁寧に周知を図りたいと考えておりますが、その際、各自治体が法律上の協議会制度によらずに構築しているいわゆる類似の仕組みも学校と地域の信頼関係の土台となる重要なものと考えており、そうした仕組みも、協議会制度の導入に向けてさらに発展充実するよう促してまいります。
○大平委員 全国にはさまざまな成功例がありますから、文部科学省としても、ぜひとも研究調査もしていただいて、大いに取り入れていって、見直しも今後していくということも重ねて求めて、私の質問を終わります。
ありがとうございました。