国会質問

2017年05月02日

学生負担増は歴代自民党政権の責任―本物の給付奨学金創設を(3月10日本会議)

衆議院会議録情報 第193回国会 本会議 第9号

○大平喜信君 私は、日本共産党を代表して、独立行政法人日本学生支援機構法改正案、いわゆる給付型奨学金法案について質問します。(拍手)
 安倍総理は、施政方針演説で、誰もが希望すれば進学できる環境を整えなければなりませんと述べました。しかし、一体誰が、希望しても進学できない環境をつくってきたのでしょうか。
 まず問われるべきは、日本の大学の学費が極めて高いことです。今や、国立大学の初年度納付金は八十一万七千八百円、私立大学は平均で約百三十一万円に上ります。
 学生生活調査によれば、大学生の学費と生活費を合わせた平均額は年間百八十六万二千円です。このうち学費は百十九万五千三百円で、実に支出の六割を占めています。二年前と比べても、学費は二万円近く上がり、生活費は約四万円も減少しています。
 このような極めて異常な状況をつくってきた歴代の自民党政権の責任は極めて重大です。今行うべきは、高過ぎる学費を引き下げることではありませんか。大臣の答弁を求めます。
 奨学金は本来、学生の生活費補填が目的ですが、今はそれが学費の支払いに充てられており、多くの学生が生活のためにアルバイトに追われています。実際、学生のバイト就労率は七一・九%に上り、週二十時間以上が一三・九%、深夜の就労は二〇・七%にも及びます。奨学金を利用する学生は、九〇年代には二割程度だったものが、今では五割を超えています。格差と貧困の拡大が進む中、世帯収入が百万円も減少していることが重い負担に拍車をかけています。これが今の実態ではありませんか。
 しかも、重大なことは、この奨学金の大半が有利子奨学金だということです。
 一九九九年に、自民、公明両党の合意で、有利子奨学金の規模を増大させました。今や、奨学金事業全体の六割以上が有利子となっているのです。その結果、多くの学生が、卒業時に三百万円、五百万円もの奨学金という名の借金を背負わされる状況がつくり出されたのではありませんか。
 その上、大学を卒業しても正社員になれないという不安定な雇用環境の中で返済を迫られ、返済が滞れば延滞金を課され、裁判というおどしまでかけられている。まさに、サラ金まがいの取り立てが横行しています。この実態を放置し続けるのですか。延滞金や強引な取り立ては直ちにやめさせるべきです。そして、有利子奨学金は全て無利子にするよう望みます。
 今、進学を希望する多くの若者たちが直面するのは、進学をしてバイト漬けと借金返済という日々を送るか、あるいは進学を断念し夢を諦めるかという余りにも苦しい選択なのです。
 こうした深刻な実態に対し、多くの学生、保護者が立ち上がり、長年にわたってその改善を求め、給付奨学金の創設を要求してきましたが、安倍政権は冷たく突き放してきました。
 今回、ようやく給付型奨学金を創設することになりましたが、本法案はその期待に応えるものとなっているでしょうか。
 まず、支給対象の問題です。
 対象となる家計基準は住民税非課税世帯としています。しかし、経済的理由で進学ができない学生は、決して住民税非課税世帯にとどまりません。なぜ住民税非課税世帯だけに対象を絞るのですか。
 しかも、住民税非課税世帯の高校生は、政府の試算でも一学年十五万九千人いるにもかかわらず、支給されるのはその一割程度の二万人とされています。なぜ二万人なのですか。その根拠をお示しください。
 この数は、高校ごとに見れば二人から三人程度にすぎません。これでは、希望する圧倒的多数の学生が対象外となってしまうではありませんか。貧困層のさらにそのごく一部しか対象にならないで、どうして、誰もが希望すれば進学できる環境と言えるのですか。大臣の答弁を求めます。
 さらに、住民税非課税世帯であっても、国立大学に通う自宅生は、授業料免除を受けるため、給付型奨学金は支給されないことになっています。
 その上、給付といいながら、学業成績次第では、支給の停止にとどまらず返還まで求めるとしています。給付というなら、文字どおりの渡し切りにするべきではありませんか。
 まさに、給付とは名ばかりで、何重にも看板に偽りありと言わなければなりません。
 給付型奨学金の創設のための財源も問題です。
 政府は、大学院生の奨学金返還免除制度の見直しや無利子奨学金の減額で充てるとしています。現在の乏しい教育費負担軽減策をさらに削って財源に充てるというのは、困っている人同士にとり合いを求めるやり方で、新たな進学困難者を生み出すことになり、本末転倒ではありませんか。
 我が党は、規模も内容も拡充をして、文字どおりの給付奨学金とすることを強く求めます。
 誰もが希望すれば進学できる環境をつくるために必要なことは、日本国憲法を文字どおり実践することです。憲法第二十六条には、全て国民は、その能力に応じてひとしく教育を受ける権利を有すると定めています。これは、生まれや育ち、家計の状況に左右されることなく学ぶことができるという規定であり、人権規定の根幹をなすものです。政府には、学ぶ権利を保障するために教育条件を整備する責務があります。
 ところが、自民党政権は、国際人権規約にある高等教育を受ける権利の保障として漸進的な無償化条項を世界の流れに逆行して長年にわたって留保し続け、世界でも異常な高学費を放置し、学生に負担を押しつけてきました。ヨーロッパ諸国では、奨学金は給付が当然で、学費も無償または低額です。
 二〇一二年にようやく留保が撤回され、今や、安倍政権には高等教育の無償化のための具体的措置をとることが求められているのです。こうした経過に照らしても、教育予算を抜本的に拡充して、教育費の無償化に進むことは当然ではありませんか。
 大臣の答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔国務大臣松野博一君登壇〕
○国務大臣(松野博一君) 大平議員から十の質問がありました。
 最初に、学費の値上げについてお尋ねがありました。
 意欲と能力のある学生が家庭の経済状況にかかわらず大学教育を受けられるようにすることは重要なことと考えております。
 国立大学の授業料については、最近の十一年間は値上げしておらず、来年度も授業料標準額の引き上げを行わないこととしています。
 また、平成二十九年度予算案では、授業料減免の対象者について、国立大学では二千人の増員、私立大学では一万人の増員を計上しています。
 御指摘の、各大学の授業料そのものを引き下げることについては、必要な財源の確保などの観点も含め、総合的な検討が必要であると考えています。
 一方、必要な財源を確保しつつ、大学等奨学金事業や授業料減免の充実など、今後とも教育費負担の軽減に努めてまいります。
 次に、学生のアルバイトや奨学金の利用状況に関するお尋ねでありますが、日本学生支援機構の奨学金は、学生生活費の実態を踏まえて貸与額を設定し、学生の希望に応じて貸与を行っています。
 アルバイトにより学業に支障が出るようなことは望ましいことではないと考えており、奨学金制度や授業料減免の充実により、学生が安心して学ぶことができる環境の整備に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、奨学金の負担に関するお尋ねでありますが、有利子奨学金については、平成十一年度の自公合意に基づき大幅に拡充を図ったことにより、それまで奨学金の貸与を受けられなかった学生への貸与が可能となりました。これにより、経済的な理由で進学を断念せざるを得なかった学生等の進学を後押しすることができ、進学率の向上に大きく寄与してきたものと認識をしています。
 しかしながら、高等教育段階における教育費負担が一部の学生にとって大きな負担となっているという課題があることは認識しています。
 このため、無利子奨学金の拡充や、所得連動返還型奨学金制度の導入等、各種負担軽減策の充実を図ってきたところであり、引き続き、学生が安心して学ぶことができるよう、財源の確保をしながら奨学金事業の充実に努めてまいります。
 次に、奨学金の返還についてお尋ねがありますが、日本学生支援機構の奨学金制度は、貸与した学生からの返還金が次の学生への奨学金の原資となっており、返還できる方からはしっかりと返還してもらうことが重要です。
 返還に係る各種取り組みは、民間等の事例を参考にし、あらかじめ本人に対して説明するなどしており、強引な回収を行っているとの御指摘には当たらないと考えます。
 一方、経済的理由等により返還が困難な方に対しては、返還期限猶予制度や減額返還制度を適用することにより対応しているところです。
 また、無利子奨学金については、平成二十九年度予算案において、住民非課税世帯の子供たちに係る成績基準を実質的に撤廃するとともに、残存適格者を解消し、必要とする全ての学生が奨学金を受けられるようにしています。
 引き続き、奨学金の返還に係る不安及び負担が軽減されるよう、奨学金制度の充実を図ってまいりたいと考えております。
 次に、給付型奨学金の対象についてのお尋ねでありますが、給付型奨学金制度は、より経済的に厳しい世帯の進学を後押しすることが政策趣旨であり、所得基準については、現在の小中高等学校で行われている給付型支援制度で基準として広く用いられている住民税非課税世帯を対象とすることとしたものです。
 次に、給付規模についてのお尋ねでありますが、給付型奨学金の対象者については、住民税非課税世帯の大学等進学者のうち、給付型奨学金を支給するにふさわしい学生を対象にするという観点から、無利子奨学金よりも高い学力・資質基準を課すこととし、二万人を対象としております。
 次に、希望すれば誰もが進学できる環境についてのお尋ねでありますが、文部科学省では、これまで、意欲と能力のある学生が経済的理由によって進学を断念することがないよう、奨学金制度や授業料減免の充実などに取り組んでまいりました。
 平成二十九年度予算案においては、授業料減免の一層の充実に加えて、無利子奨学金について、低所得者世帯の子供に係る成績基準を実質的に撤廃するとともに、残存適格者を解消することとしております。また、卒業後の所得に応じて返還月額が変わる所得連動返還型奨学金制度を導入することとしております。
 さらに、意欲と能力がありながら、経済的理由により進学を断念せざるを得ない者の進学を後押しするため、我が国として初めて、返還不要の給付型の奨学金を創設することとしております。
 これら一連の施策を一体的に進めることにより、確実に子供の進学を後押しすることが可能になると考えております。
 次に、給付型奨学金の減額及び返還についてのお尋ねでありますが、高等教育における教育費負担の軽減については、従来から、奨学金制度のほか、授業料減免などの各種支援方策を組み合わせながら、総合的に施策を講じてまいりました。
 国立大学においては、国費による授業料減免制度が整備されており、公平性の観点から、免除を受ける学生については給付型奨学金の減額を含めて調整することとし、給付型奨学金の対象者が国立大学に進学した場合には、授業料の全額免除を行う取り扱いとすることとしております。
 また、今回の給付型奨学金は渡し切りとしていますが、学生等の努力を促す観点から、毎年度、学業状況を確認することとしています。一方、貸与型奨学金以上に税の使途としての説明責任が問われるため、学業に励まず学業成績が著しく不振な者や学生としてふさわしくない行為を行う者については、返還を求める場合があることとしております。
 次に、給付型奨学金の財源についてのお尋ねでありますが、奨学金制度については、給付型奨学金の創設や無利子奨学金の大幅な拡充などの抜本的な制度改正を行うことを踏まえ、奨学金制度全体を見直すこととしたところであり、より低所得の者への支援を手厚くする観点から、現在、制度見直しの検討を行っております。
 こうした見直しにより、奨学金制度全体として効果的に教育費の負担軽減がなされるよう、必要な財源を確保しつつ、しっかりと取り組んでまいります。
 最後に、教育無償化のお尋ねでありますが、誰もが、家庭の経済事情に左右されることなく、希望する質の高い教育を受けられることは大変重要です。
 このため、幼児期から高等教育段階までの切れ目のない形での教育費負担軽減として、平成二十九年度予算案では、特に、幼児教育無償化に向けた取り組みの段階的推進、高校生等奨学給付金の充実、大学等における授業料減免等や、給付型奨学金の創設を含めた大学等奨学金事業の充実等に必要な経費を盛り込んでいます。
 今後とも、必要な財源を確保しつつ、教育費負担軽減に向けた取り組みをしっかりと進めてまいります。(拍手)