国会質問

2016年12月10日

いじめから子どものいのちを守れ(11月16日文部科学委員会)

衆議院会議録情報 第192回国会 文部科学委員会 第6号

○大平委員 日本共産党の大平喜信です。
 いじめ防止対策推進法が施行されて三年がたちました。しかし、その後も、いじめを苦にした子供たちの自殺が後を絶ちません。
 ことし八月、青森市に住む中学二年生の女子生徒が列車に飛び込み亡くなるという事件がありました。前日まで、伝統芸能の津軽手踊り、この全国大会に向けた練習にも励んでいた。しかし、スマートフォンには、ストレスでもう生きていけそうにないです、もう二度といじめたりしないでくださいなどと書き残して、みずから命を絶ってしまいました。
 先日、御遺族にお会いし、お話も伺いました。お父さんは、言葉の暴力は目に見えない傷を心に負わせてしまう、言葉で人は死んでしまうし、言葉で人を殺してしまうこともある、その恐ろしさをずっと言い続けていかないといけないとおっしゃっていました。
 子供たちを取り巻くこうした苦しみや叫びに、私たちは、改めてどう向き合い、どうやってその命を守るのか、きょうは、その対策について質問をしたいと思います。
 まず、松野大臣に、いじめについての基本的な御認識をお伺いしたいと思います。
 いじめはどの学校にも、どのクラスにも、またどの子供にも起こり得るものだと考えますが、大臣の御認識を伺わせてください。
○松野国務大臣 国のいじめ防止基本方針においては、いじめはどの子供にも、どの学校でも起こり得るものであるとしており、文部科学省としても、御指摘の点については認めているところであります。
 また、国立教育政策研究所の追跡調査では、小学四年生から中学校三年生までの六年間で、暴力を伴わないいじめについて、被害も加害も約九割の児童生徒が経験しているとの結果が出ており、このことからも、いじめはどの学校でも、どの子供にも起こり得るものと考えております。
○大平委員 認識を共有しているなというふうに思います。
 だからこそ、まず何よりも、いじめの発見、認知が大事で、教員たちが、子供の様子を、そしてその変化をしっかり把握し、見守り、対応することが求められていると思います。
 しかし、現状はどうか。この間、いじめの認知件数はふえたという報道もありましたが、その一方で、いじめは一年間で一件もなかったと報告をされた学校が今全国にどのぐらいあるのか、昨年度の調査の数字を御紹介してください。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 文部科学省が把握しております、平成二十七年度の一年間で一件もいじめがなかったとしている全国の小学校、中学校、高等学校、特別支援学校の数は、一万四千十四校でございます。これは、学校総数に対しまして三六・九%の比率でございます。
○大平委員 全国で約四割弱の学校が、一年間でいじめは一件もなかったと報告をされています。先ほど大臣が御答弁ありましたとおり、どの子にも、どのクラスにも起こり得るといういじめが、一件もなかったと報告されているわけです。
 例えば、小規模の学校で、本当に一年に一件もなかったという学校はなくはないかもしれませんが、しかし、四割のうち、少なくない学校で、いじめの認知がされておらず、また、いじめの対策のそのスタートにすら立てていないという現状だと思います。三年前の同じ調査でも、そうした学校が四二%あるとの数字でした。この間、ほとんど変わっていないのが実態であります。
 さらには、いじめを認知、発見したにもかかわらず、対応を行わなかったことが問題を大きくさせ、最悪のケースになってしまった、そういう事例も各地で起きています。
 文科省がまとめたいじめ防止対策推進法の施行状況についてでは、いじめ防止法が施行されて以降に発生した、いじめが背景にある自死事案について、具体的な学校の対応が紹介をされています。いじめの疑いを発見したときにこうした学校がどう対応したのかについて御紹介ください。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 いじめ防止対策推進法施行後に発生いたしました、いじめが背景にある自殺事案につきましては、調査報告書をまとめた資料を国のいじめ防止対策協議会に文部科学省から提出をしております。
 そこでの記述でございますが、一つ目の事例といたしましては、アンケート調査を年六回実施し、いじめが疑われる記載があったが、学校では特に確認を要するものとは捉えなかった、また、その後のアンケート調査を二回連続して亡くなった生徒が提出していない状況であったが、学校は特段の対応をしなかったという記述でございます。
 また、二つ目の事例でございますが、定期的に実施していたアンケートの結果について、亡くなった生徒の回答に変化が見られたものの、十分な分析をして対応をしておらず、また、保護者からの相談等、学校として個々の事例を把握していたが、学校はいじめとして認知して対応していなかったという記述でございます。
○大平委員 いじめを認知した際の対応の不十分さが、まさに先ほどあったように、取り返しのつかないところにまで問題を大きくしてしまっております。
 その点で、もう一つ看過できない事例があります。いじめを認知したが、謝罪をさせて、それで解決をした、それで支援や見守りを終了してしまうというケースです。
 文部科学省の問題行動等調査において、いじめの認知件数のうち、既に解決、解消されたとされたもの、そうでないものの内訳について御紹介ください。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 文部科学省が把握しております平成二十七年度のいじめの認知件数は、二十二万四千五百四十件でございます。このうち、いじめが解消しているものとされているのが十九万九千二十五件でございまして、八八・六%の比率でございます。
 なお、いじめが一定の解消が図られたが、継続支援中のものにつきましては二万六百四十三件、これは九・二%、それから、解消に向けて取り組み中のところが四千百六十三件、一・九%となっております。
○大平委員 約九割のいじめが解決をしたと報告されているわけです。
 大臣、この結果についてどのように思われるでしょうか。
○松野国務大臣 先ほど政府参考人が答弁したとおり、平成二十七年度に認知されたいじめのうち、大部分が解消していると報告をされています。
 しかしながら、文部科学省に設置したいじめ防止対策協議会の議論の取りまとめにおいては、「いじめが解消に至っていないにも関わらず、謝罪をもって解消とし、支援や見守りを終了するケースがある。」と指摘されており、何をもって解消とするかは慎重な見きわめが必要だと考えます。また、同じ報告書において、「学校は、いじめが解消に至るまで被害者への支援を継続すること等を徹底する。」とされています。
 いずれにしても、いじめの解消については、安易な判断を避け、解消とされたいじめが再発することがないよう、いじめの被害者を守り通すことを第一とし、細心の注意を払いながら対応する必要があると考えております。
○大平委員 私も、大臣の御答弁と同じ認識を持っております。
 いじめ問題は、何よりもまず、いじめられている子供の安全を確保すること、そして、いじめ加害者のいじめ行為をやめさせなければなりません。そのためには、現場でよくやられているんですが、けんか両成敗とか握手で仲直りとか、こういう表面的な対応で解決、解消したとするのではなくて、また、いじめの加害行為のみに対して直接の指導をするというやり方ではなくて、やはり加害者に、いじめは人権侵害であり暴力であるということをしっかり理解させるとともに、加害行為をしている子供たちの背景を想像し、優しく寄り添い、共感しながら、継続した支援を行うことが不可欠だと思います。だから、実際には、解決に向けては一定の時間が当然必要になってくるというふうにも思います。
 こうしたそもそものいじめ認知の問題、そして認知をしてからの対応のまずさの問題は、いじめから子供たちの命を守るためにも、早急に改善をしていかなければならないと思います。私は、そのための対応として、二つの問題について伺いたいと思います。
 一つは、教員自身がいじめに対して誤った対応をしないように、いじめ対応のスキルを育んでいくという点です。
 残念ながら、現場では、少なくない誤った認識と、またそれに基づく対応が行われていると言わざるを得ません。先ほど紹介した例に加えて、例えば、いじめの被害者に対して、あなたにも原因がある、嫌だと言えないあなたも悪いなどのいわゆる被害者責任論と、その対応があると思います。
 いじめ自死遺族らでつくるNPO法人ジェントルハートプロジェクトがことし七月に行ったいじめに関する教員対象アンケートでは、いじめられる側にも原因があると答えた教員が、男性で三三・四%、女性で二三・八%いました。
 松野大臣にお伺いしたいと思うんですが、私は、被害者責任論は、いじめが人権侵害であり暴力であるということを見ずに、いじめ被害者を大きく傷つけ、信頼を失う重大な誤りだと思いますが、大臣の御認識を伺いたいと思います。
○松野国務大臣 御指摘のような、教職員による、いじめられる側にも問題があるというような認識や発言は、いじめている児童生徒や周りで見ていたり、はやし立てたりしている児童生徒を容認するものにほかならず、いじめられている児童生徒を孤立させ、いじめを深刻化するものであり、許されないと考えております。
○大平委員 こうした教員の誤った対応によって、さらに子供が傷つけられるようなことがあってはなりません。そして、いじめの解決どころか、もっと深刻化させてしまうような指導の現状は直ちに改善をしていかなければなりません。いじめ対応のスキルを教員の中に育んでいくためには、そのことに特化した研修の実施と充実改善が重要だと考えます。
 そこで、文科省に伺いますが、いじめの問題に関する校内研修を実施した学校の割合はどう推移しているでしょうか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 文部科学省が実施いたしました児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査によりますと、いじめ問題に関する校内研修を実施したという項目につきましては、全学校数のうち、平成二十四年度が六八・八%、平成二十五年度が七〇・三%、平成二十六年度が七一・三%となっております。
 また、平成二十七年度につきましては、いじめの問題に関して職員会議等を通じて教職員間で共通理解を図ったり校内研修を実施したりしたという項目で調査を行いまして、全学校数のうち九五・六%の実施状況となっております。
○大平委員 二十七年度になってこの数字が一気にふえているものですから、不思議だなと思って調べてみましたら、先ほど局長から御答弁あったとおり、この年から聞き方が変わっているんですね。
 二十七年度からは、これまで二つに分けていた、いじめの問題に関して職員会議等を通じて教職員間で共通理解を図ることと、そしてもう一つ、校内研修を学校で実施したという二つに分けていたものが、またはということで一つの設問になっているわけです。ですから、どちらかをやっていればカウントされるということになっているのであります。なぜこうした質問項目に変えたんでしょうか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、平成二十六年度までの調査におきましては、項目を二つに分けて調査をしてまいりました。平成二十七年度の調査を実施するに当たりまして、調査項目全体についての見直しの検討を行いました際に、形式的な校内研修という名称のいかんにとらわれず、この二つの調査項目につきましては、いじめ問題について学校内の教職員間で共通理解を図る取り組みを実施しているという意味で実質的に同じであるというふうに判断をいたしましたので、これら二つの調査項目を統合した次第でございます。
○大平委員 私、これではだめだと思うんですね。職員会議で少し話しただけでも、この数字、カウントされちゃうわけですよね。職員会議で少し話し合っただけでは、前段ずっとるる述べてきたように、教員のいじめ対応のスキルが身につくとは私は思いません。職員会議で少し話し合うということと、きっちり時間をとっていじめ問題について特化した校内研修を行うということは全く違うと私は思うんです。
 もちろん、職員会議で共通理解を図る、それもその時々大いにやったらいいわけですが、それとは別に、やはりきちんと校内研修をやるんだ、全ての学校でやるんだということを推進していかなければならないと私は思うんです。こういうふうに質問項目を変えてしまった結果、校内研修がどれほどの学校でやられているのかということがわからなくなったんですよ。
 大臣、これは、改めて研修それ自体の実施の有無、あるいはその中身、どんなふうにやられているのかという中身、それを改善していくためにも、そういうことをきちんとつかむということをやはり改めてやる必要があると思うんですが、いかがでしょうか。
○松野国務大臣 学校において教職員がいじめの問題について学ぶ機会を持っているか調査することは、法に基づくいじめ防止等の取り組み状況を把握する上で重要であると考えております。
 文部科学省としては、学校現場の現状を踏まえながら、校内研修という名前にとらわれず、学校内の教職員間におけるいじめ問題に関する共通理解を図るということについて、実施状況の把握に努めてまいりたいと考えております。
○大平委員 研修かどうかという名前の問題を私は問うているわけじゃなくて、やはり目的なんですよね。教員一人一人がいじめ対応のスキルを育んでいかなければならない、そういうために行われている研修、そういう内容になっているのかということをきちんと把握していただきたいということを重ねて求めたいと思います。
 ジェントルハートプロジェクトは、年間、最低でも三時間、いじめ対策の担当教員には十時間のいじめに特化した研修を義務づけ、そのための財政支援を国がしっかりと行うこと、そして、研修の内容としては、過去の具体的事例に学ぶことが重要で、被害者遺族の話を聞くことや調査報告書を資料に使うことなどを検討するよう求めていることも大臣にお伝えしておきたいというふうに思います。
 教員のスキル向上とともに、改善すべきもう一つの点は、いじめの対応をあれこれの一つにしてほしくはないわけですが、やはりこの課題でも、教員の多忙化の問題、その解消こそが求められているというふうに思います。教職員定数を改善し、クラスサイズを小さくすることは、いじめの問題の解決、改善のためにも必要不可欠だと思います。
 しかしながら、財務省は、きょうの午前中の議論でも少しありました、今月四日の財政制度等審議会において、先十年で教員を四万九千人減らすことができると言ってきました。全く現場の実態をわかっていない許しがたい暴論であり、この点でのはっきりした松野大臣の立場と決意を示していただきたい、定数の改善をしっかりと求めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○松野国務大臣 いじめや不登校を含め、学校現場における喫緊の課題に対応するためには、チーム学校の推進や学校現場の業務改善等の取り組みとあわせ、次世代の学校に必要な指導体制を構築していくことが重要だと考えております。
 学校現場の実情や、さらなる対応が必要な課題を踏まえ、平成二十九年度概算要求においては、いじめ、不登校等の未然防止、早期対応等の強化、発達障害等の児童生徒への通級による指導や外国人児童生徒等教育の充実、小学校専科指導やアクティブラーニングの視点からの授業改善、チーム学校の実現に向けた基盤整備などによる「次世代の学校・地域」創生プランの推進などに向け、「次世代の学校」指導体制実現構想を策定し、教職員定数の改善を要求しております。
 文部科学省としては、学校現場を支援し、子供たちの教育環境を充実していくため、必要な教職員定数の確保、充実についても全力で取り組んでまいります。
○大平委員 教職員定数の改善、クラスサイズを小さくする、少人数学級の拡大を進めていく、ぜひともこの決意、進めていっていただきたいというふうに思います。
 次に、いじめ自死の被害者遺族の知る権利、これをどう保障するかについて伺いたいと思います。
 朝、我が子が行ってきますと家から出かけ、夕方、変わり果てた姿で帰ってくる、なぜ我が子が死ななければならなかったのか、親はそのことを強く知りたいと思います。こうした親の願いは私は当然のものだと思いますが、大臣も同じ御認識でしょうか、お伺いします。
○松野国務大臣 御遺族において、かけがえのない我が子を失った悲しみから、事案の全容を知りたいという思いを持たれることは当然であると考えております。
 国のいじめ防止基本方針においては、背景調査に当たり、遺族が、当該児童生徒を最も身近に知り、また背景調査について切実な心情を持つことを認識し、その要望、意見を十分に聴取するとともに、できる限り配慮と説明を行うこと等に留意するとされています。
 文部科学省としては、学校がこのような認識のもとで調査に当たるよう、引き続き、法の趣旨の徹底に努めてまいります。
○大平委員 しかし、現実はどうかを見ていきたいというふうに思うんですね。
 このいじめ防止法が施行されてもなお、隠蔽が各地で続いています。一つ具体的な事例を御紹介したいと思うんですね。
 五年前の九月一日の未明に、鹿児島県の出水市で、中学二年の女子生徒が、四メートルもの高さの金網をよじ登って、九州新幹線の線路に飛びおりて自殺をしました。
 当時、一週間後にアンケートがとられましたが、そのアンケートは開示されることなく、市の教育委員会と学校長を初めとする学校関係者を中心とする事故調査委員会、さらに学識経験者などで構成する事故調査専門委員会が出した結論は、今回の事故の直接のきっかけとなる出来事は確認できなかったというものでした。遺族はこの委員会の設置にかかわっておらず、また、メンバーの氏名の公表もされていません。
 女子生徒が亡くなった直後から、遺族のもとには、生徒や保護者からいろいろな情報が寄せられました。また、遺族も、独自に調査を行い、女子生徒が自死をしたのは学校でいじめがあったからではないかという思いを強くしました。我が子が、孫が、なぜみずから命を絶たなければならなかったのか、それを明らかにするためにもアンケートを開示してほしいと学校や市教育委員会に要請をしてきましたが、受け入れられませんでした。
 そして、事故から四年四カ月たったことしの一月八日、アンケートの結果の一部が遺族に開示されました。遺族が起こした裁判によって開示となったものです。
 今回のアンケート開示が、市の教育委員会の判断ではなく裁判によって開示されることになったこと、大臣、どのように思われるでしょうか。
○松野国務大臣 本件につきましては、法施行前の個別案件であり、コメントは差し控えたいと思いますが、法施行後、平成二十五年十月に定められた国のいじめ防止基本方針においては、重大事案の調査を行うに当たり、学校の設置者また学校は、被害者に対して事実関係等その他必要な情報を提供する責任を有することを踏まえ、調査により明らかになった事実関係について、いじめを受けた児童生徒やその保護者に対して説明するものとしております。
○大平委員 この事故が発生したのは法施行前ですが、これは今なお続いている問題であります。
 このアンケートの開示を受けて、遺族は再調査を求めているわけですが、市の教育委員会や市長などは拒否をし続けています。あげくの果てには、自死には家族の問題もあるようだと、ここでも被害者責任論が公然と表明されるなど、二重三重に遺族を傷つけています。
 再発防止と遺族のために行うべき調査、先ほど大臣もおっしゃいました、そのはずの調査が遺族を傷つけるようなことはあってはならないと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○松野国務大臣 本件については、先ほども申し上げましたけれども、法施行前の個別の案件であって、コメントは差し控えたいと思いますが、国のいじめ防止基本方針では、背景調査においては、亡くなった児童生徒の尊厳を保持しつつ、その死に至った経過を検証し再発防止策を講ずることを目指し、遺族の気持ちに十分配慮をしながら行うことが必要であるとされております。
 一般論として、遺族を傷つけるようなことがあってはならないと考えております。
○大平委員 直ちに再調査に進むべきだということを私からもお訴えしたいと思います。
 私が重大だと思うのは、出水市の教育委員会は次のように述べているんです。国が示した通知や指針に基づき、事故調査委員会や外部委員のみで構成する事故調査専門委員会でアンケートに基づいた調査、分析を行うとともに、御遺族から申し出のあった出来事についても追加調査し、最終的に報告書をまとめられたと述べています。
 つまり、国が示した通知や指針に基づいてやっているから問題はない、そういう態度であり、国の通知やあるいは指針が、再調査をしない理由に、あるいは隠蔽の原因になっている、このことであります。
 大臣、この問題は私は決して他人事じゃないというふうに思うんですね。いじめを認めず、発見してもまともに対応せず、そしてあげくの果てには隠蔽をする、こうした一貫して事実に向き合おうとしないその姿勢は許されないと言わなければなりません。
 そのための、改めて国としての仕組みづくりが必要で、国の指針の見直しが求められていると思いますが、いかがでしょうか。
○松野国務大臣 繰り返しになりますけれども、本件については、個別の案件であり、当該地方公共団体の長において適切に判断されるべきものであるため、見解を述べることは差し控えたいと思いますが、公立学校の場合、いじめ防止対策推進法第三十条第二項において、いじめの重大事態の調査結果の報告を受けた地方公共団体の長は、重大事態への対処または重大事態と同種の事態の発生防止のため必要があると認めるときは再調査を行うことができるとされております。
○大平委員 当該の出水市の教育委員会自身が、国が示した通知や指針に基づいてやっていることだと述べているんですね。これは決して他人事ではないですし、こうした事態は決して鹿児島だけの問題ではありません。
 冒頭に紹介した青森の女子生徒のケースでも、御遺族が子供たちにとったアンケートを見せてほしいと求めたところ、全校生徒四百三十人のうち、たった二十一人分のアンケート、しかもパソコンで打ち直したものを見せられたとのことでした。その内容は、いじめについての情報は一つもなかった。遺族の皆さんがこれだけかと聞くと、これだけだ、原本は見せないと。こういうことが全国で依然行われているのであります。
 遺族の願いに応えるためにも、隠蔽のできない仕組みづくりは待ったなしの課題だと言わなければなりません。もう一度お伺いしたいと思います。
○松野国務大臣 いじめ防止対策推進法第二十八条第二項においては、学校の設置者または学校は、いじめの重大事態の調査を実施したときは、いじめの被害者に対して、重大事態の事実関係等その他の必要な情報を適切に提供するものとしております。
 先般、いじめ防止対策協議会より、いじめの重大事態の調査の進め方についてガイドラインを作成するよう提言されたところであり、調査方法、アンケート結果を含む調査結果の情報提供について、被害者へ事前に説明を行うこと、被害者側への説明責任と個人情報保護の観点を踏まえ、調査結果の取り扱いについても盛り込む予定であります。
 また、教育委員会、学校等が法や基本方針等にのっとり適切に対応しているかどうか、外部からのチェックを受けるようになる必要があると考えており、保護者や地域における法の理解増進を図ってまいります。
○大平委員 防止法の中身を大臣、紹介されたと思います。必要な情報を適切にというふうにあるわけですが、実態としては適切に行われていない、まさに実行力あるものに仕組みづくりを見直す必要があるということを重ねて訴えておきたいと思います。
 仕組みづくりという点で一点お伺いしたいのは、初動調査の問題です。
 いじめが疑われる子供の自死事案で、直後の子供たち自身へのアンケート調査が、何があったのか、事実を把握する上で非常に有効であることは、先ほど大臣もお認めになったかというふうに思います。
 しかしながら、実際にこの問題で文部科学省が現場に対して示しているものを見ると、例えば、子供たちへの調査をするのに保護者の承諾を得なければならない、承諾書を書いて提出してもらうようになっていたりだとか、あるいはまた、子供たちへのアンケートの案文を見ても、回答を書かせた上で、最後に記名を求めるものになっております。以前は記名はしてもしなくてもいいとなっていたのを、わざわざ記名せよというふうに変えてきているのであります。
 大臣、これは、速やかな調査、あるいはまた、ありのままの事実を子供たちが書く、そのことへの障害になるのではないでしょうか。承諾書はやめるべき、そして無記名もしくは記名選択式に改めるべきだと考えますが、いかがでしょうか。
○松野国務大臣 自殺の背景調査は、自殺という重大な事態にかかわる調査であるため、自殺が発生した後には、周囲の児童生徒にうつ、不安などの反応があらわれることがあり、調査への参加を無理強いせず、本人の意思を尊重することが必要であることなどの理由から、背景調査の指針において、承諾書のサンプルを示しているところであります。
 また、指針において、時としてうわさや臆測、悪意のある記述等が含まれる危険性もあり、無記名式の場合、このような記述等をその後の聞き取り調査で確認できなくなるなど、調査実施上の困難が生じる可能性があるとしており、記名式とすることが望ましいと考えております。
○大平委員 この調査は何のためにやるのか、一体何が大事なのかということをもう一回明らかにする必要があると思うんですね。
 私は、かけがえのない一人の子供の命がなくなった、それに対して、何があったのかをみんなで全力で明らかにする、御遺族の当たり前かつ最大の願いであり、また、再発防止にとっての必要不可欠の取り組みでもある、そして、子供たちの人生にとっても大切なことだというふうに思います。
 私は、例えば、二段階にしてもいいというふうに思います。まずは、直ちに全員に、無記名で、とにかく知っていることをありのままに書いてほしいと一斉に調査を行う、そして、その後の追加調査は必要に応じてよく検討もして、そこでは保護者の承諾やあるいは丁寧に説明する、そういう段取りを踏むということもあると思います。そんなふうに二段階でやるということも含めて、この問題を検討していただきたいというふうに思います。
 大臣、隠蔽を防ぎ、被害者遺族の尊厳を守るためにも、以下の提案をしたいと思います。
 教育委員会や学校が持つ情報を被害者遺族と共有する仕組みをつくること、調査内容、調査方法についても被害者遺族が意見を言え、尊重される仕組みをつくること、調査報告書に被害者遺族の記入欄を設けること、これらの提案について検討するよう求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
○松野国務大臣 国のいじめ防止基本方針においては、自殺の背景調査の留意事項として、調査を行うに当たり、学校の設置者または学校は、調査の方法について、できる限り遺族と合意をしておく必要があるとしております。
 また、同基本方針においては、調査主体が調査結果を学校の設置者に報告する際、遺族が希望する場合には、その所見をまとめた文書の提供を受け、調査結果の報告に添えて提出するものとされているため、このような対応が徹底されるよう周知をしてまいりたいと考えております。
○大平委員 よく、学校の責任が問われると裁判に訴えられる、だから隠そうということに学校あるいは教育委員会はなるわけですが、実際は、全くの逆であります。御遺族は、何よりも、何が起きたのか、その真実を知りたいだけであり、それが隠されるのが何よりの不信の原因になっている、そしてやりたくもない裁判を起こさざるを得ない、その最大の理由になっているわけです。
 大臣、このことをどう思われるでしょうか、御答弁いただきたいと思います。
○松野国務大臣 いじめを原因とした子供たち、生徒児童の自死については、これは先ほど答弁をさせていただいたとおり、お亡くなりになった御本人の尊厳をしっかりと守りつつ調査が進められるべきものだと思いますし、かけがえのない我が子を失った保護者の皆さんにとっては、その事実関係を知りたいというのも当然のことであろうと思います。
 そこに至っては、先ほど申し上げましたが、保護者の皆さん方の意見もしっかりとお聞きをするということが重要でありますし、何よりも、学校や教育委員会によって事実関係が隠蔽されるようなことはあってはならないことだと考えております。
○大平委員 大臣もその有効性、重要性を認めておられます初動調査、私たちは、できるだけ三日以内に行うべきだということもあわせて求めたいと思います。
 私たち日本共産党は、二〇一二年十一月に、「「いじめ」のない学校と社会を」との提言を発表しました。きょう議論してきました目の前のいじめ対策の問題に加えて、いじめ解決に取り組むための条件整備、とりわけ三十五人以下学級の推進は、この課題においても直ちに進めなければならないと思います。
 何よりも子供たちの命を守る、そのために全力を尽くす決意を重ねて申し上げまして、きょうの私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。