学生の期待に応える給付奨学金の創設を(10月19日文部科学委員会)
衆議院会議録情報 第192回国会 文部科学委員会 第2号
○大平委員 日本共産党の大平喜信です。どうぞよろしくお願いをいたします。
ノーベル医学・生理学賞を受賞された東京工業大学大隅良典栄誉教授は、日本でも社会全体が大学を支えるという認識が広がらないと科学者は育たない、今、学生は貧しくなっていて、支援なしに研究に邁進することは難しい、このように語られ、御自身のノーベル賞の賞金を若い研究者の支援に活用する、そのように述べられました。長年、日本の学問研究の第一線で御活躍されてこられた方の深い実感がこもったそういう言葉とその行動を、私たちは深く受けとめなければなりません。
大学の研究を支える運営費交付金などの充実、増額が求められているとともに、学生たちの学ぶ権利をしっかり保障するための支援の抜本的強化が求められております。
高い学費と生活費を賄うために、今、学生の二人に一人が奨学金を利用し、その多くが有利子であり、その平均利用額は三百万円に上る。卒業後には重い借金となってのしかかってきます。そんな中で、少なくない若者たちが、進学を諦めるか、あるいはバイト漬け、借金漬けで進学するかという大変苦しい選択が迫られています。
この間、多くの新聞やテレビもこうした実態を取り上げ、今や大きな社会問題にもなっております。そして、教育費の負担軽減、奨学金制度の改善充実を求める署名が全国から大規模に寄せられる中、政府も、給付型奨学金制度の創設に向けて具体化を始めました。
きょうは、政治が若者たちの学ぶ権利を保障し、未来を支えるという点でまさに喫緊の課題となっている大学の学費・奨学金問題について質問をしたいと思います。
まずは、従来からある貸与の奨学金制度についてお尋ねをいたします。
安倍総理は、所信表明演説の中で、「本年採用する進学予定者から、その成績にかかわらず、必要とする全ての学生が無利子の奨学金を受けられるようにします。」と述べられました。先日の大臣の挨拶を私はお聞きしまして、この点については具体的には触れられませんでしたので、改めて、大臣に二つのことを確認したいと思います。
一つは、貸与条件を満たしているにもかかわらず、予算が足りないために無利子奨学金を受けることができないでいる、いわゆる残存適格者の問題であります。二万四千人がいまだ残っておりますが、これは、所信表明を読めば、来年度でもって完全に解消するということで、大臣、間違いありませんか。
○松野国務大臣 無利子奨学金については、有利子から無利子への流れを加速するために、これまでも、毎年度、貸与人員の増員を図っており、平成二十四年度予算では三十七万八千人であったところ、平成二十八年度予算では四十七万四千人へ九万六千人増員してきたところであります。これにより、残存適格者数は、平成二十四年度の十万五千人から、平成二十八年度は二万四千人まで段階的に減少してきております。
平成二十九年度概算要求においても、残存適格者の解消に向けて無利子奨学金の貸与人員の増員を要求しているところであります。今後、予算編成過程において必要な予算を措置し、意欲と能力のある学生たちが進学等を断念することがないよう、大学等奨学金の充実に努めてまいりたいと考えております。
○大平委員 概算要求でも要求しているとの御答弁でした。ぜひとも、要求どおり必ず実現のために頑張っていただきたいというふうに思います。
もう一点は、成績基準の問題です。
現行の制度は、成績が三・五以上ないと無利子奨学金は受けられないとされております。これも、大臣、所信表明を読めば、基準は撤廃するということで間違いないかと思ったんですが、このたびの文科省の概算要求を見ておりますと、そこには、成績基準の緩和というふうになっているんですね。
大臣、これは、撤廃、成績基準はなくすということで間違いありませんか。お答えください。
○松野国務大臣 低所得世帯の成績基準については、未来への投資を実現する経済対策において「低所得世帯の子供たちに係る成績基準を平成二十九年度進学者から実質的に撤廃し、」との内容が閣議決定をされております。これを踏まえ、文部科学省としては、低所得世帯の子供たちに係る無利子奨学金については、平成二十九年度進学者から成績基準を実質的に撤廃するための事項要求を行っているところであります。
今後、予算編成過程において、意欲と能力のある学生が進学等を断念することがないよう、大学等奨学金の充実に努めてまいります。
○大平委員 撤廃という事項要求をしているとの答弁でした。撤廃を確認いたしました。
きょうは、財務省、大臣政務官にもお越しいただいております。
同じ質問なんですけれども、所信表明でも述べられたとおり、この残存適格者二万四千人の解消、成績基準の撤廃を来年度予算で行うということで間違いないかどうか、御確認ください。
○三木大臣政務官 大平委員からの質問にお答えしたいと思います。
今大臣から答弁ございましたように、奨学金制度につきましては、一億総活躍プランにおきまして、安定財源を確保しつつ、奨学金制度の拡充を図るとされております。
また、無利子の奨学金につきましては、未来への投資を実現する経済対策において、速やかに残存適格者を解消するとされたところでもございます。
こうした政府の方針に基づきまして、財務省といたしましても、今後、厳しい財政事情も踏まえつつ、予算編成過程において具体的な対応を検討してまいりたいと思います。
○大平委員 成績基準の撤廃はどうですか。
○三木大臣政務官 大平委員の質問にお答えしたいと思います。
無利子の奨学金につきましても、一億総活躍プランにおいて、低所得者世帯の子供に係る成績基準を大幅に緩和するとされたところでございます。
また、今回の経済対策におきましても、低所得者世帯の子供たちに係る成績基準を平成二十九年度、二〇一七年度、つまり来年からでございますけれども、この進学者から実質的に撤廃をし、必要とする全ての子供たちが受給できるようにするとされているところでございます。
財務省といたしましても、これらを踏まえまして、具体的な内容を検討しているところでございます。
○大平委員 成績基準は撤廃ということでしたが、残存適格者の解消の方は何だか曖昧な答弁だったように思います。
私たちも、残存適格者の解消は一刻も早く実現すべきだということで、この間、何度も求め続けてきました。文部科学省も概算要求でそのことは求めてきたというふうに思いますが、やはり財務省の壁に阻まれて、この間、近年で一番多い年でも八千六百人にとどまる、そしていまだに解消できていないということになっております。
所信表明に加えて、安倍首相は、予算委員会の答弁でも、残存適格者を解消するとともに、このようにはっきり答弁をしておりますので、必ず、来年度、二万四千人の解消を実現してもらうように強く求めたいというふうに思います。
政務官、もうこれで質問を終わりますので、御退席いただいて結構です。ありがとうございました。
続いて、給付の奨学金についてお尋ねしたいと思います。
安倍総理の所信表明では、「給付型の奨学金も、来年度予算編成の中で実現いたします。」と述べられております。今、文科省内につくられた検討チームで制度設計の議論が行われ、八月三十一日には、「給付型奨学金制度の設計について これまでの議論の整理」、こういう文書が示されました。
そこではどういう内容が今検討をされているのか。
まず、給付の対象範囲についてですが、この「議論の整理」の中にある「対象者の選定について」では、どういう世帯の人たちを給付型奨学金の支給対象と考えているとされているか、その学生数とあわせて御説明ください。
○常盤政府参考人 お答え申し上げます。
ことしの八月三十一日に公表いたしました、文部科学省給付型奨学金制度検討チームの「給付型奨学金制度の設計について これまでの議論の整理」という資料がございます。そこでは、給付型奨学金の対象者については、「例えば、児童養護施設退所者、生活保護世帯、住民税非課税世帯などが考えられる。」としているところでございます。
また、今申し上げました、それぞれの世帯区分における高等学校一学年当たりの人数の概算でございますが、児童養護施設退所者、里親出身者は約二千人、生活保護世帯は約一・五万人、住民税非課税世帯は約十四・二万人というふうに、「議論の整理」において記しているところでございます。
○大平委員 低所得者世帯ということで、児童養護施設の退所者、生活保護世帯、住民税非課税世帯などが考えられており、おおよそ、人数にして、先ほどの局長の答弁を合計すると約十六万人ということでした。
確かに、こうした世帯の皆さんは、経済的負担が大変重くのしかかり、意欲や能力があるにもかかわらず苦しい選択を迫られている。少なくない子供たちが進学の夢を諦めさせられております。
私も、この間、さまざまなお話を聞いてまいりました。広島に住むある生活保護世帯のケースですが、両親と三人の子供という御家族です。お母さんは病気で長いこと働けず、お父さんはその看病と子供たちの育児をしながらパートをして働いている。
一番上のお兄ちゃんは、大学三年生、県外の国立大学の夜間コースに通い、仕送りはなく、月三万円の無利子奨学金とバイト代で生活をしている。三年後期からはバイトも減らさなければならないということで、この奨学金の利用額を月五万円にふやしたということでした。
二番目のお姉ちゃんは、短大の一年生で、やはり県外の公立短大に通っている。無利子、有利子、それぞれ月五万円の奨学金を借りている。
さらに、三番目の次女、中学三年生で、来年度は定時制高校への進学を目指しているというお話でした。
お父さんにお話を聞きますと、彼らの就職もどうなるかわからない中で、卒業後に多額の奨学金を返していけるのか不安、本当にかわいそうで申しわけない、せめて給付制の奨学金があれば少しは楽になるのにとおっしゃっておられました。私も、大変胸が締めつけられる思いで聞きました。
こういう人たちの進学や修学の後押しをするものが今度の制度だ、こういうことだと思いますが、私は、むしろ遅過ぎると言わなければならないと思います。また同時に、問題は、果たして本当にこの規模でいいのか、政府自身が言っている、希望する誰もが進学できる制度というのが果たしてこの規模でいいのか、このことが問われているというふうに思います。
大臣にお聞きしたいと思うんですが、先ほど答弁があったとおり、今検討がされている給付対象は、一学年で約十六万人です。進学率を例えば七割で試算しても、給付対象者数は全学生数の約一二%、進学率五割なら八・五%。
大臣、給付対象者は全体の一割にいくかどうか、こういう程度で考えられているということでしょうか。
○松野国務大臣 給付対象の規模につきましては、対象者の現状等を踏まえ、制度設計の中で検討しているところであり、全学生に占める割合については、現時点で明確にお答えすることはできません。
○大平委員 大臣、ここは極めて大事な論点だと私は思っています。この給付型奨学金に期待をしてこの議論に注目されている皆さんは、どういう規模で、あるいは自分自身がその対象になるのかどうか、このことに注目をしていると思うんですね。ぜひ、答弁を避けずに答えていただきたいと思うんです。
私の試算は、文科省が現時点で示している数字に基づいて計算をしております。それで計算すれば、一割にいくかどうか、そういう程度にとどまるんじゃないかというふうに聞いております。そのことをお認めになるのか、ならないのであればどういう規模の検討がされているのか、もう一度お答えいただけますか。
○松野国務大臣 現在給付対象者として検討している対象の数は先ほど政府参考人が説明申し上げたとおりでありますけれども、給付対象の規模は、一つの要因としては一人当たりの給付額の問題がございます。それも含めて総合的に検討し、対象規模の範囲を決定していくという作業が必要になります。
できるだけ多くの方にという思いは、それは委員と私も共通するところだと思います。しかし、これは財源の問題もございますから、先ほど申し上げた内容も含めて、今後、予算編成の過程で設計を進めるということでございます。
○大平委員 今、額は問題にしていないんです。どういう規模、どういう範囲で支給対象となるのかということをまず一点目の論点として明らかにしたいということ。
できるだけ多くのというお話も、大臣、ありました。ぜひ大臣に聞いていただきたいのは、こういう今検討されている規模で、学生たち、保護者らの切実な思いに応えるものになるのかどうか、これを見ていきたいというふうに思うんですね。また、あと財源の問題も議論していきたいというふうに思います。
日本学生支援機構が二年ごとに行っている学生生活調査に、家庭からの給付程度別、アルバイト従事者の全学生に対する割合という設問があります。アルバイトをしている学生たちが実家からどれくらいの仕送りを受けているのかを示したものであります。最新の二〇一四年度の大学昼間部の平均の数字を説明していただけますか。
○常盤政府参考人 お答え申し上げます。
日本学生支援機構の平成二十六年度学生生活調査によりますと、大学昼間部の学生アルバイト従事者のうち、四つの類型に分かれますけれども、一番目として、家庭からの給付のみで修学可能な学生は三八・三%、二番目に、家庭からの給付のみでは修学に不自由な学生は一四・一%、三番目に、家庭からの給付のみでは修学継続困難な学生は一三・四%、四番目に、家庭から給付がない学生は七・五%、このようになっております。
○大平委員 今局長から答弁があったものについて、委員の皆さんにお配りしています資料の一枚目につけております。グラフにしております。
実家からの仕送りはない、だからバイトをしているという学生が七・五%。実家からの仕送りだけでは修学継続が困難だ、だからバイトをしているという学生が一三・四%。合わせて二〇・九%の学生が、大学を続けるためにバイトをしていると答えています。さらに、バイトをしなければ修学に不自由を来すという学生も入れれば、さらにその数はふえるということになります。少なくともこういう規模で客観的に給付奨学金を求めている学生たちがいるということが、この学生支援機構の調査でも示されているというふうに私は思います。
さらに、配付資料の二枚目をごらんいただきたいと思います。
先日、京都のある学生の方のお話を聞く機会がありました。生きやすい京都をつくる全世代行動、LDA―KYOTOという団体を立ち上げ、京都市内のほぼ全ての大学門前でアンケートを行い、五百五十人を超える方の声を集めたと。きょう、冊子もいただいて持っているんですけれども、さまざま切実な声がたくさん寄せられておりました。
資料につけましたのは、バイトの目的を聞いた回答では、学費、生活費のためと答えた人が五七%、断トツの多さでした。さらに、ひとり暮らしの学生のうち、実家からの仕送りがゼロと答えたのが二八%。月三万円以下を含めると四一%の学生が、親からの仕送りをほとんど受けずに生活しているということでした。先ほどの学生生活調査のデータとおよそ一致しているというふうに言えると思います。
また、アンケートに寄せられた声の一部をそこに抜粋いたしました。十八歳の学生、週五日バイトして、月九万円稼ぎ、生活費に充てている、さらに奨学金を月六万円借りて、学費に充てている。二十四歳の学生、週三十一から七十八時間バイトし、年間百五十万円の学費を自分で稼いでいる。二十二歳の学生、ひとり暮らしで仕送りはない、週三十時間、時給九百円でバイトをかけ持ちし、支援機構から有利子奨学金を借りて生活している、バイトのかけ持ちで体力的につらい、十三時間で八連勤など無理なシフトを組まれ、労働時間が長い、誰にも相談していない。こもごも悲痛の叫びが寄せられております。
大臣、生活保護世帯や住民税非課税世帯などはもちろん最優先で支えなければなりません。しかし、そうでない世帯も、実家からの仕送りがなかったり、あっても少額だったり、そして二つも三つもかけ持ちでバイトをし、もちろん奨学金も借りて、必死になって何とか修学しているという状況です。
さらに言えば、学費や生活費を賄うためにはどうしても働き続けなければならないという学生たちのこうした事情につけ込んで、セクハラやパワハラ、むちゃなシフトや長時間労働など、いわゆるブラックバイト、会社の無法行為が横行している。こういう現状を私は一刻も放置するわけにはいかないと思います。
大臣、こうした実態を聞いてどのようにお感じになられるでしょうか。文科省や検討チームでこうした実態がきちんと議論に反映されているのかどうか、お答えいただきたいと思います。
○松野国務大臣 学生のうち約七割がアルバイトに従事をしており、学修するためにはアルバイトに頼らざるを得ない学生がいることは認識をしております。その中には、家庭からの給付のみでは学業に支障があると回答したものが含まれていると認識をしております。
○大平委員 そうであるならば、今検討されているこの支給の規模で果たしてそれに応えたものになっているのかということが、やはり大きく問われなければならないというふうに思います。この規模がふさわしいものなのかどうか、また、さらに別の角度として、世界各国に目を向けていきたいというふうに思うんですね。
各国の給付奨学金制度が一体どうなっているか。アメリカ、ドイツ、フランス、韓国の給付奨学金制度の人数と全学生数に占める割合、また給付金額について御説明ください。
○常盤政府参考人 お答えいたします。
給付型奨学金につきまして、文部科学省内で、義家副大臣をトップとする有識者も参画をいたします検討チームを設置いたしまして、八月末に議論の整理をし、公表したところでございます。「これまでの議論の整理」において、各国の給付型奨学金制度の人数、割合、年間給付額、こういうものについても資料として示しているところでございます。
今御指摘のありました四カ国について、御指摘の項目について申し上げたいと思います。
第一はアメリカでございます。アメリカのペル奨学金につきましては、給付人数が約八百二十万人、給付割合が約三五%、給付金額は平均で四十三万円。
ドイツの連邦奨学金でございますが、給付人数が約六十七万人、給付割合が約二七%、給付金額が、親と同居の場合で約五十二万円。これについては、半額給付、半額貸与というふうに伺っております。
それから、フランスの国立大学における高等教育一般給与奨学金でございますが、給付人数が約四十七万人、給付割合が約三五%、給付金額が最大で四十八万円でございます。
最後に、四つ目、韓国でございますが、韓国の国家奨学金1でございますが、給付人数が約百三十万人、給付割合が約三六%、給付金額、これは約七万円から約五十六万円まで幅があるということで、これは各国のウエブサイトなども参考にして整理をしております。
○大平委員 先ほどの局長の答弁を三枚目の資料につけました。これは文部科学省から提供されたそのものの資料です。先ほど御答弁があったとおりです。
いずれも、全学生数の二割後半から三割、そういう規模で支給がされている。額も、月額三万円から四万五千円というものでした。ドイツやフランスなどは、授業料が無料であるにもかかわらず、給付奨学金がこうした規模で支給をされているというわけです。
今、文科省で検討されている案と比べても、その違いは一目瞭然だと言わなければなりません。希望すれば誰もが進学できる制度にというのであれば、こうした各国の規模も参考にして行うべきだということも訴えたいと思います。
大臣、改めて、一人でも多くの学生たちの進学、修学の後押しをするために、給付奨学金を、一割いくかどうかという規模から思い切って拡大していくことを求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
○松野国務大臣 給付型奨学金の対象者の選定につきましては、経済的理由により進学を断念せざるを得ない者の進学を後押しする観点や、進学に向けた学生たちの努力を促すといった観点から検討を進めてきたところであります。
給付型奨学金制度検討チームの「これまでの議論の整理」においては、例えば、生活保護世帯等の低所得者世帯を対象としつつ、一定の成績基準を設定することを検討すべきとされております。また、すぐれた成果をおさめた生徒については学校推薦等の方法により対象とすることも検討課題としているところであり、経済的負担を軽減し、進学を後押しするという制度創設の目的に照らし、適当な対象者の規模を検討してまいりたいと考えております。
○大平委員 なかなか、一割いくかどうかという規模から思い切って拡大することを求めるという、そのことに応える答弁じゃなかったなというふうに感じます。
日本共産党は、まずは月三万円、七十万人、これは現在の奨学金利用者の約半分ですが、ここに給付をするところから始めようという提案をしています。今こそ学生たち、保護者たちの願いに応えて、日本の奨学金制度を、きょう午前中、公明党の富田先生からもありましたが、この導入のときに給付か貸与かという議論もあったというのもありました。この日本の奨学金制度を、いわゆる教育ローンから本当の意味での奨学金へ、本物の奨学金へと転換していく。給付奨学金こそが基本となるような、そういう画期的な出発点にしようではないかということも私は強く訴えたいというふうに思います。
さらに、給付のあり方についてお尋ねしたいというふうに思います。
支給の具体的な方法については、今どういう方法が検討されているでしょうか。御説明ください。
○常盤政府参考人 お答えいたします。
文部科学省内での検討チームの「これまでの議論の整理」の資料から申し上げたいと思いますが、給付の方式といたしましては、学業の状況を確認して支給を確定させる方法である返還免除型と呼ばれる方法がございまして、このメリットといたしましては、学修状況を確認した上で免除することで、しっかりと学業を修めた者への給付となるということなどがございます。一方で、デメリットといたしましては、給付を受けられるかどうかが入学前に確定せず、学生にとって不安感があるということなどがございます。
また、対象者と認定されたことをもって当該年度は支給を確定し、翌年度への継続の可否を当該年度の学業の状況によって確認する事前給付型と呼ばれる方法もございます。このメリットにつきましては、学修状況にかかわらず給付されることにより、学生にとっては安心感が得られることがございます。一方、デメリットについては、学修がおろそかな者にも給付される可能性があることということが報告書の中に記載されてございます。
○大平委員 文科省自身も、制度創設の基本的な趣旨である進学を後押しするためには、みずからが対象となるのかどうかについて入学前の時点で予見可能とすることが重要だと述べておられます。
返還免除型では、今局長の答弁にあったとおり、これがなかなか予見できないわけですよね。進学をちゅうちょする学生たちの背中を押すものにならないというふうに私は思います。
学修状況の確認は、先ほどもあったとおり、事前給付型でも可能だということは文科省も認めておられることだというふうに私、理解をしております。
給付というなら、当然、この渡し方、給付のあり方は渡し切り、事前給付型にすべきだというふうに思いますが、大臣、はっきり言明していただけないでしょうか。
○松野国務大臣 給付方法それぞれにおけるメリット、デメリットにつきましては、ただいま政府参考人から説明を申し上げたとおりであります。
いずれにしても、給付を受ける学生がしっかりと学修をしていることを確認しつつ、安心して学生が学べる給付方法になるよう、今後の予算編成過程においてその設計を進めたいと考えております。
〔委員長退席、亀岡委員長代理着席〕
○大平委員 返還免除型というのは、文科省が出してある資料の中にもはっきり書いてあるとおり、これは貸与なんですよね。そして、予見可能性が極めて乏しい、極めて乏しいというか、ないわけですよね。だから、給付というのであれば、大臣、これは当然事前給付型にすべきだということを私ははっきり申し上げておきたいというふうに思います。
さらに、学費について伺いたいというふうに思います。
家庭の経済事情で進学を断念せざるを得ない最大の原因は、国立大学で年額約五十三万円、私立大学平均で約八十六万円という、世界的に見ても高い学費、授業料にあります。
そもそも、大臣にお伺いしたいと思うんですが、今の日本の学費、授業料は高いと思っておられるでしょうか。あるいは適正、またあるいは安いというふうに思っておられるでしょうか。現状の認識についてお伺いしたいと思います。
○松野国務大臣 授業料の設定や教育費負担軽減のための方策等については、各国でさまざまな制度があり、一概に比較をすることは困難であると考えております。
なお、OECDが公表しているデータでは、諸外国と比較をし、日本は授業料が高いグループに分類をされているところであります。
○大平委員 大臣の御認識も、高いということでよろしいですか。
○松野国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、各国によって教育費負担軽減の方策等に違いがございます。そういったことをあわせて総合的に比較検討する必要があるということでございまして、ただ、OECDが出しているデータにおいては、日本は授業料が高いグループに分類をされているということだと認識をしております。
○大平委員 私が尋ねましたのは、大臣、各国との比較で高いか安いかというふうに聞いているわけではなくて、今の日本の学生たちやあるいは保護者の皆さんの家計状況や生活環境の中での負担感も含めた、今の学費が高いのか、適正なのかということをお尋ねしたわけです。
私、大臣にぜひ聞いていただきたいというふうに思うんですが、ここに、東京私大教連が行った、私立大学新入生の家計負担調査という冊子を持ってまいりました。二〇一五年度版ということで、最新の冊子であります。
この中身を見てみますと、入学の年にかかる費用という設問がありまして、自宅外通学者で二百九十五万円、自宅通学者でも百五十三万円となっており、入学費用の負担感は、九割を超える家庭で重いと感じているというふうに回答がされています。
自由記述欄にも、例えば、母子家庭で、児童扶養手当も全額送金している、食費を含めた生活費を切り詰めて生活、食事は御飯とふりかけ程度、私立大学生二人を抱えており、生きた心地のしない、眠れない毎日だ、自分たちの老後も心配ですが、バイトに疲れて勉強できない状態にもしたくありません。親御さんの悲痛の叫びがこもごもつづられております。
私たち日本共産党は、こうした声に応えて、運営費交付金や私学助成の増額などを進めながら、学費を十年かけて半額にする、こういう提案もしています。
大臣、奨学金制度の充実とともに、こうした高過ぎる学費を値下げしていく方向に踏み出すべきだと考えますが、御所見いかがでしょうか。
○松野国務大臣 意欲と能力のある学生が家庭の経済状況にかかわらず大学教育を受けられるようにすることは、重要なことだと考えております。
国立大学の授業料については、最近の十年間は値上げをしておらず、さらに、平成二十八年度は、国立大学法人運営費交付金を対前年度同額とし、授業料標準額の引き上げも行わないこととしております。また、授業料減免について、対象者を二千人増員したところです。
私立大学の授業料については、設置者である学校法人の責任において定めるものでありますが、国としては、平成二十八年度は、私立大学等経常費補助の中で、授業料減免の対象者を六千人増員したところです。
御指摘の大学の授業料の引き下げについては、必要な財源の確保などの観点から慎重な検討が必要だと考えています。一方、大学等奨学金事業や授業料減免の充実に今後ともしっかり取り組み、大学段階における教育費負担軽減に努めてまいりたいと考えております。
○大平委員 授業料の値下げを私は求めたわけですが、財源等の問題でなかなか難しい、そんなお答えだったと思います。
文科省は、二言目には、この授業料の問題を伺いますと、授業料免除枠を拡大してきた、こんなふうにおっしゃるわけです。
そこで聞きますが、今度の概算要求では、国立、私立それぞれの授業料の免除枠はどういう規模になっているでしょうか。それは学生全体のどのぐらいの割合になっているかもあわせて御説明ください。
○常盤政府参考人 お答えいたします。
国立大学の授業料減免等につきましては、平成二十九年度概算要求におきまして、対前年度十三億円増の三百三十三億円を要求してございます。授業料免除枠対象人数を対前年度二千人増の六・一万人、これは学部、修士ですと一一・三%、博士ですと一二・五%となりますけれども、この数、額を要求しているところでございます。
また、私立大学の授業料減免等につきましては、同じく平成二十九年度概算要求におきまして、対前年度二十六億円増の百十二億円を要求しております。授業料減免等対象人数を、対前年度一万二千人増の六万人、これは全私立学生に占める割合としては二・七%となりますけれども、この数、額を要求しているところでございます。
○大平委員 免除枠を拡大してきたといっても、国立大学で一〇%ちょっと、私立大学でいえば二・七%だという御答弁でした。とりわけ私学は本当に深刻だというふうに思います。
ことし三月に発表された文科省の委託事業であるいわゆる中途退学調査、ここでは学生からの経済的支援の相談状況を調査していますが、その特徴について、局長、部長になるんでしょうか、御説明いただきたいと思います。
○常盤政府参考人 平成二十七年度に文部科学省からの委託調査によりまして実施をいたしました、御指摘の中退に関する調査、正式の名称は長いので中退に関する調査とさせていただきますけれども、この報告書によりますと、学生から大学への経済的支援の相談状況について、その特徴として、一つは、相談件数が増加傾向にあること、二つ目に、各種奨学金制度に関する内容が最も多くなっていることという特徴がございます。
また、国公立では授業料減免制度について、私立では授業料の延納についてが、奨学金制度に並ぶ相談件数となっており、設置形態での相違が見られるということが特徴として挙げられております。
○大平委員 相談件数がふえていること、そして、国立大学はその相談の内容として、奨学金制度の問題とともに授業料減免の制度が学生課の方からも説明をされるわけですけれども、私立大学では授業料の延納が多く寄せられたということでした。
このような国立大学と私立大学の相違は、授業料減免制度が制度化されているかそうでないかがあるというふうに分析もされている。まさに私立大学では、授業料減免制度が二・七%しかないから、学生たちからの相談に対しても授業料の延納や分納でしか応えられないということが数字でもはっきり出ているということが明らかだと思います。
大臣、もちろん国立も十分だとは言えませんが、緊急的な対応として、大学数で七割、学生数で八割という私立大学の授業料減免制度を国の責任で抜本的に充実、拡充するべきじゃないでしょうか。お答えいただきたいと思います。
○松野国務大臣 意欲と能力のある学生等が家庭の経済状況にかかわらず大学教育を受けられるようにすることは、教育の機会均等を図る上で極めて重要なことだと考えております。
文部科学省においても、大学段階における学費負担の軽減に努めております。これまで、私立大学が家計の状況等に応じて授業料減免等を行う場合の予算上の支援を年々充実しており、平成二十八年度予算においては、約四万八千人を対象として八十六億円を確保しているところです。
さらに、平成二十九年度概算要求においても、引き続き支援の充実を図るとともに、特に低所得者層に対する補助率のかさ上げを行うため、対前年度二十六億円増の百十二億円を要求しており、引き続き、私立大学に通う学生が安心して学ぶことのできる環境整備に努めてまいります。
○大平委員 低所得者層に対する補助率のかさ上げという御答弁がありました。
ただでさえ国の私学助成は、大臣もよく御認識されていると思いますが、この間一貫して右肩下がりというふうになっています。経常経費の二分の一は国が補助をするというふうに私立学校振興助成法でも定められているにもかかわらず、今や一割を切るような深刻な状況になっている。
私は、補助率のかさ上げなど小さいことを言わずに、授業料の減免ぐらいは国が責任を持って全額負担するという、このぐらいの充実を図るべきだということもあわせて訴えておきたいというふうに思います。
きょうの質疑でも明らかになったと思いますが、若者たちを苦しめるその実態の切実さからも、そしてまた世界の水準からも、さらにはまた、日本が批准した国際人権A規約十三条二項、中等、高等教育の無償教育の漸進的導入との約束の実現の点で見ても、奨学金制度の抜本的な改善充実、そして高過ぎる学費の値下げは待ったなしの課題だと言わなければなりません。
最後に伺いたいのは、財源問題を含めて、この問題の議論を文科省内の予算のやりくりという枠組みにとどめずに、教育予算そのものを抜本的にふやしていく中で実現していくべきだということを訴えたい。
条約上、日本が払う義務のない米軍への思いやり予算を削ることや、大企業優遇の不公平税逃れを正していくことなどしながら、教育予算をせめてOECD諸国の平均水準まで引き上げるだけでも相当なことができる。大臣、今こそ、若者たちの願いに応えた、そういう政治の決断をするべきじゃないでしょうか。
○亀岡委員長代理 松野文部科学大臣、手短にお願いします。
○松野国務大臣 教育再生は安倍内閣の最重要課題の一つであり、我が国が成長、発展を持続するためには、一人一人の能力や可能性を最大限に引き出し、多様な個性を伸ばす教育が重要であり、教育投資の充実が必要不可欠であります。
教育再生はもとより、その他、文部科学省が担う科学技術イノベーション、スポーツや文化の振興は未来への先行投資そのものであり、教育投資を初め文部科学省予算全体の充実に向けて全力を尽くしてまいります。
○大平委員 若者たち一人一人のかけがえのない夢を応援する、そのために政治が責任を果たす、そのことを求め、日本共産党もそのために全力を挙げる決意を申し上げまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。