三江線存続へ、住民の声を聞け(4月19日国土交通委員会)
衆議院会議録情報 第190回国会 国土交通委員会 第8号
○大平委員 日本共産党の大平喜信です。
まず冒頭、熊本地方を襲った大地震と、その後の相次ぐ余震によりお亡くなりになられた方、また御遺族の皆様に心からのお悔やみを申し上げます。また、被害に遭われた皆さんに心からのお見舞いも申し上げたいというふうに思います。
避難されておられる方たちの一日も早い生活再建と避難環境の改善のために、私たち日本共産党も全力を尽くす決意を申し上げます。
この間の相次ぐ激しい揺れの中で、熊本、大分両県では、土砂災害が多数発生し、各地で高速道路や鉄道が寸断をされ、水や食料、医薬品など、支援物資を届けるのも大変大きな困難に直面をしております。
私は、改めて、大量の人の移動や物流の役割を担う鉄道の重要性、これを感じずにはおられません。一日も早く復旧され、開通することが求められるわけですが、同時に、そこに鉄道の路線があるということそのものの重要性も痛感するわけです。
そこで、きょうは、中国地方を走る全長百八キロ、島根県江津市から広島県の三次市を結ぶJR三江線の問題について質問したいと思います。
昨年十月十六日、JR西日本から、三江線にかかわる関係自治体の首長に対して、ニーズに合った持続可能な公共交通のあり方の協議に入りたいとの申し入れがあったことを受けて、地元マスコミなどが一斉に三江線廃止と大きく報道しました。
三江線は、先ほど述べた江津市と三次市を含め、両県六つの市町をまたぐ路線であり、もしこれが全線廃止となりますと、大変広大な地域に大きな影響が及ぶことになります。
私は、この間、島根県の美郷町、川本町、邑南町の町長、また江津の市長さんにもお会いをし、直接お話を伺いましたが、皆さん共通して存続させてほしいという御意見でした。
ことしの一月には、関係市町の首長と議長でつくる三江線改良利用促進期成同盟会の皆さんが要望書を持って国会にも来られました。大臣も直接お受け取りになったと聞いておりますが、要望書には、JR西日本からの申し入れを受けて各市町で住民説明会を行った結果、住民から三江線存続の強い声があった、三江線存続に対する住民の切なる思いを受けとめていただきたいとつづられております。
そこで、まずお伺いしますが、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律、いわゆるJR会社法が二〇〇一年に改正された際、JRがその事業を営むに際し配慮すべき事項に関する指針というものを国土交通省は定めております。その趣旨を説明していただけますか。
〔委員長退席、小島委員長代理着席〕
○藤田政府参考人 平成十三年のいわゆるJR会社法の改正に当たりましては、完全民営化後のJR本州三社が当分の間配慮すべき事項として、指針を定めることとされました。
その趣旨につきましては指針の中に記載がございます。少し読み上げさせていただきます。「その営む鉄道事業に係る利用者の利便の確保及び適切な利用条件の維持並びにその事業を営む地域の経済及び社会の健全な発展の基盤の確保を図るためには、なお当分の間、国鉄改革の経緯を踏まえた事業運営が行われる必要がある。」こういう趣旨が書かれております。
○大平委員 民営化されたからといっても、JRは、その歴史的経過を踏まえて、利用者の利便の確保、適切な利用条件の維持、地域経済及び社会の健全な発展の基盤の確保を今後も図る必要があるので、以下の配慮すべき事項を定めた、そういう御答弁だったと思います。
つまり、JRは、他の民間鉄道会社よりも公共性が高い、そういう鉄道であるという趣旨だと読みました。こうした鉄道だからこそ、住民の皆さんはこれまで安心して利用されてこられました。
私は、今回、関係自治体に伺う際に、実際に三江線に乗車をし、実際に使っておられる方にお話を伺いました。
例えば、通勤で使っているという六十代の女性。廃止になってバスになったら運賃が上がるのが心配だ、今は片道二百四十円、バスだと幾らになるのか、町営のバスだと同じ距離で七百円、これじゃやっていけない、そんなお話でした。
また、八十代と九十代の女性二人組。この日は、月に一回の楽しみで、お風呂とお昼御飯が食べられる施設に行ってきたその帰りだというお話でした。ひとり暮らしで車も持っていないので、医者に行くのも買い物に行くのもこの三江線を使っている、なくなったら大変だ、そんな声でした。
こういう声にこそ真摯に耳を傾け、その思いに応えていく、そういう協議にしなければならないと私は感じました。
そこで、JR西日本は三江線の利用者が大きく減少しているんだと説明をしておりますが、しかし、私は、住民のお話を伺いますと、その原因はJR西日本にもあるのではないかと言わざるを得ないんです。
例えば、通学の足としての役割をこの三江線は果たしてきましたが、だんだんと利用しにくくなったとの声を聞きました。
現在の三江線のダイヤで、島根中央高校の最寄り駅である石見川本駅、朝の到着時間は、上り下り、それぞれ何時何分でしょうか。局長、お答えください。
〔小島委員長代理退席、委員長着席〕
○藤田政府参考人 石見川本駅における朝の通勤通学時間帯の到着時刻でございますけれども、上り電車、これは江津方面行きでございます、これが七時四分と八時二十四分の二本でございます。下り電車、三次方面行きでございますが、これは七時七分の一本が停車いたします。
○大平委員 七時四分、七時七分というお話でした。下りの列車の始発駅である江津駅、これは最も利用者が多い駅でありますが、これを出発するのが六時ちょうどなわけですね。つまり、通学に利用するには早過ぎるわけです。
例えば二〇〇三年のころのダイヤを見ますと、それでも江津駅出発が六時三十二分で、石見川本駅の到着が七時二十四分。今よりも三十分遅く、それなりの利用があったわけですが、こうしたダイヤになってしまって使えなくなったと。下校時間も同様に利用しづらく、こういう状況の中で、保護者の方が自家用車で送り迎えをしないといけなくなった。その中で、スクールバスの要望が強まり、導入がされ、そのことでなお一層三江線を利用する学生が減っていったという、そんなお話でした。
その一方、今でもなお、江津工業高校、ここでは少なくない学生が通学でこの三江線を使っております。同高校のホームページを見れば、登校時間という欄にわざわざ、「山陰線上下、三江線の時刻に合わせているので、八時五十分からホームルーム活動を開始しています。」と書いてあります。つまり、朝一番の便が江津駅に着くのが八時十五分なので、それに合わせて高校の開始時間を設定しているとのことでした。
大臣に改めてお伺いしたいと思いますが、ニーズに合った公共交通のあり方の協議という場合に、JR西日本が言う、利用者が減り続けています、だから廃止ですということではなくて、こうした背景や経過などもしっかり踏まえることが大事だと考えますが、いかがでしょうか。
○石井国務大臣 JR三江線につきましては、輸送密度が平成二十六年度には五十人であるなど、利用状況が大変厳しい路線であります。
これまで、JR西日本や沿線自治体におきましては、JR三江線の利用促進や活性化の取り組みを行ってきたところでありますが、引き続き厳しい利用状況を踏まえ、JR西日本は、昨年十月、沿線の六市町に、持続可能な地域の公共交通の構築に向けた検討を開始する方針を伝えております。
それ以降、JR西日本におきましては、沿線自治体や住民との意見交換を行い、本年二月からは、沿線六市町、JR西日本、島根県及び広島県をメンバーとする検討会議において、持続可能な地域公共交通のあり方について検討を行っていると承知をしております。
国土交通省といたしましては、地域公共交通のあり方について、地域の足の確保という観点から、沿線自治体、JR西日本等の関係者で十分に議論していただくことが重要と考えており、地域と丁寧な議論が行われるよう必要に応じて助言等を行ってまいります。
○大平委員 地域と地域の住民の皆さんに丁寧な説明、その他答弁がありましたが、住民の皆さんにとっては、なかなか自分たちのこうした思いが聞いてもらえていないという、そんな思いを持っておるわけですね。ですから、ことしの一月、わざわざ関係自治体の首長、皆さんがそろって上京して、切なる思いを受けとめてほしい、こういう要望を大臣にも直接したわけであります。その思いを、その背景も含めて、ぜひとも受けとめていただいて、この協議への国交省としての助言というふうにありましたが、強めていただきたいというふうに思います。
もう一点、大臣に伺いたいと思うんですが、首長さんたちが口をそろえておっしゃっていたもう一つの点は、三江線がなくなることによって地域がますます寂れてしまうんじゃないかという不安の声でした。住民の足という問題とともに、江の川沿いをゆっくりと走るこの三江線はその景観も大変魅力で、季節ごとに変わる風景を見に来るファンも少なくありません。地域の活性化のために、観光という面からも、地元の皆さんは三江線の存続を求めて懸命に努力をしてこられました。
大臣にお伺いしますが、鉄道というのは、単に移動手段というだけではなくて、その町の文化であり、観光資源であり、その点からも地域の活性化に欠かせない一つの財産だと感じます。つまり、バスにも車にも取ってかわれない鉄道ならではの魅力があり、そこに人が集まり、それを沿線自治体は活用するんだと私は思うんですが、大臣の御認識はいかがでしょうか。
○石井国務大臣 鉄道は、路線ごとにその具体的な役割は異なりますが、基本的には、国民生活や経済活動を支える輸送機関としての役割を果たしております。
その上で、各地域における文化の形成や観光資源としての活用など、地域活性化という観点からも重要な役割を果たし得るものと考えております。
○大平委員 私は、地元で有名な石見川本駅の改札に一年のうち三百三十日ぐらい立って、三江線からおりてくるお客さんたちに観光案内をしている川本町の観光協会の方のお話も伺いました。
その方は、三江線がなくなることによって、鉄道地図の上から川本の名前が消えてしまう、田舎が否定されるようだ、それは決して看過するわけにはいかないとおっしゃっておりました。
地域創生というお話もありますが、その観点からも、こうした意見にしっかりと耳を傾けた協議を行うよう強く求めておきたいというふうに思います。
少し歴史も振り返りながら、さらに質問したいと思います。
国鉄の分割・民営化問題が議論された当時の日本国有鉄道改革に関する特別委員会でも、私も議事録を拝見しましたが、当時の政府参考人あるいは橋本龍太郎運輸大臣は再三再四にわたって、赤字路線も含め切り捨てることは考えていない、生き残らせるため、生き返らせるための分割・民営化なんだという説明をしております。赤字路線を抱えても会社は十分に企業経営ができるとまで述べております。
そうした議論があったことは間違いありませんね。確認です。
○藤田政府参考人 国鉄改革に際しましては、JR各社がその時点での路線を適切に維持できる、そういう考え方で制度設計をしております。
○大平委員 そこで、問題の三江線ですが、JR西日本は、赤字路線であり、採算がとれないんだという説明を繰り返し行っております。
国交省にお伺いしますが、国鉄からJR西日本に変わった一九八七年当時の三江線の輸送密度、いわゆる一日平均の利用者数ですが、どのぐらいあったでしょうか。
○藤田政府参考人 三江線の輸送密度は、JR発足時である昭和六十二年度におきまして、四百五十八人でございました。
○大平委員 四百五十八人という輸送密度でした。
当時の議論で、輸送密度が四千人未満かどうか、これが路線の存廃を判断する一つの基準だったというふうに伺いました。
そのことを考えると、四百五十八人という数は、採算だけでいえば当然赤字の路線であったことは疑いないというふうに思います。つまり、JR発足当時から三江線は赤字であり、そのことを承知の上でJRに引き継いだ、それでも経営としてやっていけるからだ、そういうことだったというふうに思います。
そこで伺いますが、JR西日本のここ三年間の営業損益と経常損益はどうなっているでしょうか。
○藤田政府参考人 JR西日本の営業損益でございますけれども、平成二十四年度は一千二十三億円の黒字、二十五年度は一千十七億円の黒字、二十六年度は一千百二十億円の黒字でございました。
それから、経常損益につきましては、平成二十四年度が七百七十五億円の黒字、二十五年度が七百九十九億円の黒字、二十六年度は九百二十一億円の黒字でございました。
○大平委員 御答弁にあったとおり、ここ三年間、JR西日本は一千億円を超える営業利益を上げております。最新の数字である二〇一四年度の経常利益九百二十一億円は、分割・民営化以降、最高額である。初めから赤字路線であることをわかっており、それでも全体としては黒字になるし、むしろ生き返らせるんだ、そのために引き継ぐんだというのが当時の議論だったと思います。
そして、今や過去最高の利益を上げる中、しかし、三江線は赤字路線で採算がとれないから廃止の検討を、この説明は、私は、JRの公共性を鑑みても、またこれまでの議論からしてみても、住民の納得が決して得られないのではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
○石井国務大臣 JR三江線については、JR西日本や沿線自治体において、その利用促進や活性化の取り組みを行ってきました。
例えば春、夏、秋の各シーズンに団体列車を設定して、活性化に努める等の努力を行ってきたというふうに承知をしておりますが、残念ながら、国鉄民営化当時の昭和六十二年度輸送密度四百五十であったものが、直近では五十まで著しく減少しておりまして、引き続き厳しい利用状況にあるというところでございます。
こうした状況を踏まえて、今現在、沿線六市町、JR西日本、島根県及び広島県をメンバーとする検討会議において、持続可能な地域公共交通のあり方について検討を行っているものと承知をしております。
国土交通省としては、先ほども申し上げましたが、地域公共交通のあり方について、地域の足の確保という観点から、沿線自治体、JR西日本等の関係者で十分に議論をしていただくことが重要と考えております。
○大平委員 先ほどの答弁の繰り返しだと思いました。なかなか答えていただけないなと思いましたが。
少し角度を変えましてさらにお伺いしますが、国鉄からJRに分割・民営化される際に、四百五十八人という輸送密度であるにもかかわらず、廃止をされなかった理由は何だったでしょうか。
○石井国務大臣 JR三江線は、当時、代替輸送道路が未整備であったことから、バス転換等の対象から除外され、廃止されなかったものと承知をしております。
現在は、JR三江線に並行する国道三百七十五号線について、道路拡幅等の一定の整備がなされ、道路状況は改善されているものと認識をしております。
○大平委員 一定の整備がされているという御答弁でした。
私、実際、代替交通、道路の整備の状況というのも視察に伺いましたけれども、やはりこれはちょっと認識が全然違うなという実感です。大臣もぜひ行ってみられたらというふうに思いますけれども、特に美郷町や川本町などの沿線道路というのは本当に道が細くて、くねくね道で、バスがすれ違うというのがなかなかできない。たとえ小さな車両が通ってすれ違うとしても、お年寄りなどは乗り物酔いとか転倒とか、そういういろいろな不安が、代替交通と言われても、よぎるわけです。
川本町長さん、美郷町長さんなども口をそろえて、代替道路の問題は決してまだ解決に至っていない、そのもとでの廃止は認められないということを共通した認識としておっしゃっていたということもはっきり申し上げておきたいというふうに思います。
最後にお伺いしたいのは、冒頭にも取り上げたJR会社法改正の際の国土交通省が定めたJRに対する指針の内容についてです。
ちょっと一問飛ばしますが、廃止について述べた指針の第2項ロには、鉄道事業者に対して、路線廃止の届け出をする際には関係自治体や住民にその事情を十分説明することを求め、そして鉄道事業法第二十八条の二では、国土交通大臣は関係自治体や住民の意見を聴取するというふうに定められております。
大臣、皆様方が定めたこの規定からしても、そして公共性を持つJRの路線の存廃の判断は、きょう私がさまざま紹介もした住民の皆さんの声や願い、また関係自治体の意見をよく聞き、また、事業者は住民、関係者に十分に説明もして、合意や納得を得ながら進めていくということが大前提になると思いますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。
○石井国務大臣 JR西日本の路線につきましては、新会社がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針に基づきまして、その廃止に際して、国鉄改革の実施後の輸送需要の動向等の事情変化について地域に十分説明することが求められております。
JR三江線につきましては、JR西日本から路線の廃止の意向が示されたものではなく、現在、沿線六市町、JR西日本、島根県及び広島県をメンバーとする検討会議において、持続可能な地域公共交通のあり方について検討を行っているものと承知をしております。
いずれにいたしましても、国土交通省としては、先ほどの答弁と重なりますが、地域公共交通のあり方について、地域の足の確保という観点から、沿線自治体、JR西日本等の関係者で十分に議論をしていただくことが重要と考えております。
○大平委員 十分な議論をという御答弁でした。
私の地元の地方紙でもある中国新聞にも、投稿欄には二日に一本くらいのペースで、三江線を残してほしい、そういう本当に切なる思いというのが掲載される。私もその思いを本当に受けとめて、きょうここに、質問に立たせていただいております。
JR西日本は、きょう私が紹介をした住民の皆さんの切実な声や思いにしっかりと寄り添い、一緒に考えていくという姿勢を持つこと、そして、国土交通省は、JRが公共交通としての役割を今後とも十分に果たしていくようしっかり注視もし、意見もしっかり述べていただくということも求めて、きょうの私の質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。