新国立競技場建設財源スキームのまやかしを批判(4月6日文科委員会)
衆議院会議録情報 第190回国会 文部科学委員会 第4号
○大平委員 新国立競技場の問題は混迷を繰り返し、二千五百二十億円もの桁外れの巨額の費用に国民の怒りが集中し、白紙撤回に追い込まれた末に、今の千五百五十億円を上限とした整備計画が決定されました。
しかし、この間のオリンピックが行われた、例えば北京の国家体育場が約五百億円、ロンドンが約八百億円などのメーンスタジアムの建設費と比べても、まだ二倍、三倍という額であります。オリンピック・アジェンダ二〇二〇でも運営経費の削減が求められており、また、多くの国民が求めている簡素で無駄のない運営という点からも、まだ極めて巨額であるという点は私ははっきり申し上げておきたいと思います。
さらに、問題は、千五百五十億円で終わるのかという点も大変不透明な点であります。昨年十二月の関係閣僚会議で了承された財源スキームでは、経費がさらに膨らむ可能性として、賃金または物価等の変動と、消費税率一〇%への増税が既に想定をされています。
お伺いしますが、安倍政権は来年四月に消費税を一〇%に引き上げると言っておりまして、法律でも既に決めております。私たちは増税すべきではないという立場でありますが、皆さん方の方針どおりにいけば、遠藤大臣、もうこの金額はこれでは済まないということははっきりしているんじゃないでしょうか。必ず経費は膨らむんだということを国民にどのように説明されるんでしょうか。
○遠藤国務大臣 お答えいたします。
まず、新国立競技場の工費につきましては、昨年八月に関係閣僚会議において決定した整備計画における千五百五十億円の上限額を踏まえて公募を行い、発注者であるJSCと、事業者である大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所共同企業体との間で、千四百九十億円を上限とする協定が結ばれております。
ただし、この整備計画の中にも明示しておりますが、賃金または物価等の変動が生じた場合は、公共工事標準請負契約約款第二十五条に準拠し、工事請負代金額の変更を行う可能性がある。また、消費税率につきましても明示しておりますが、八%で計算しており、平成二十九年四月一日以降の消費税率一〇%が適用される場合には、八%で計算した金額との差額が別途必要となる。両方とも、この整備計画の記者会見の中でしっかりと報告をさせていただいております。
今後とも、整備計画に基づき、私が議長である関係閣僚会議においてJSCによる整備プロセスをしっかりと点検し、着実な実行を確保していきたいと思っております。
○大平委員 つまり、先ほどの答弁は、千五百五十億円にとどまらないということを大臣みずから認められたと思うんですね。昨年の八月に関係閣僚会議で決めた整備計画に言う「千五百五十億円以下とする。」という約束をもこれはほごにするものになるんじゃありませんか。大臣、いかがでしょうか。
○遠藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、千五百五十億円を上限とする、ただし、先ほどの、公共工事標準請負契約約款第二十五条あるいは消費税については、その変更が必要になるということをこの中でしっかり明示して発表させていただいております。
○大平委員 つまり、千五百五十億円では終わらない、しかも、その経費はどこまで膨らむのかもわからないということになっているということです。極めて無責任な姿勢だと言わなければなりません。
こうして大きな不安と不信が国民の中に広がる中、この極めて巨額な整備経費を、サッカーくじへの依存度をさらに大きくしながら賄おうというのが今度の法案であります。
改めて確認ですけれども、財源スキームでは、整備費などの分担対象経費千五百八十一億円を国費と東京都の負担とサッカーくじで賄おうとしていますが、その三者の負担割合と額を説明してください。
○中川政府参考人 お答え申し上げます。
昨年十二月二十二日の関係閣僚会議において決定した財源スキームにおきましては、御質問の、分担対象経費千五百八十一億円程度を、国の負担とスポーツ振興くじの特定金額と東京都の負担の割合を、二対一対一の割合で負担することとしております。
金額は、国の負担が七百九十一億円程度、スポーツ振興くじの特定金額が三百九十五億円程度、そして東京都の負担が三百九十五億円程度となっております。
○大平委員 国が半分を賄い、残り半分を東京都とサッカーくじで折半するという説明でした。
しかし、財源スキームをよく読んでみますと、分担割合二対一対一のところに小さな字で注が書かれてあります。何と書いてあるか、説明してくれますか。
○中川政府参考人 御説明申し上げます。
引用させていただきます。
御指摘の注記におきましては、
スポーツ振興くじの特定金額をJSCの特定業務勘定に繰り入れること及び収益(センター法附則第八条の三の規定による読替え後の第二十二条第一項に規定する収益をいう。)の一定割合とされている国庫納付金の割合を見直すことについては、いずれも国庫納付金の減少につながる。このため、「スポーツ振興くじの特定金額」のうち、国庫納付金の減少見合いの額については、「スポーツ振興くじの特定金額」ではなく、「国の負担」に含める。
と記載しております。
引用終了です。
○大平委員 今の引用の中にある「国庫納付金の減少見合いの額」とは幾らですか。
○中川政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘の国庫納付金の減少見合いの額は、四百三十二億円程度を見込んでございます。
○大平委員 その四百三十二億円がこの財源スキームで国費としている七百九十一億円の中に入る、この注はそういう意味でしょうか。確認です。
○中川政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど御説明させていただきましたとおり、スポーツ振興くじの特定金額をJSCの特定業務勘定に繰り入れること及び収益の一定割合とされている国庫納付金の割合を見直すことにつきましては、いずれも国庫納付金の減少につながりますことから、国庫納付金の減少見合いの額、御指摘のとおり四百三十二億円でございますが、これにつきましては国の負担に含めているところでございます。
○大平委員 本来国に入るはずだったお金が入らなくなる、だからそれは国の負担に認めるんだという説明でした。
その国に入るべきお金というのは、もともとその財源は何でしょうか。確認です。
○中川政府参考人 お答え申し上げます。
国庫納付金の減少見合いの額につきましてはスポーツ振興くじの収益を財源としております。これまでの御質問でも御説明しましたとおり、特定金額の五%から一〇%への引き上げ及び国庫納付率の引き下げがなかりせば、国庫納付金として国庫に収納され、そして新国立競技場の整備費として国庫より支出されたことになったであろう、そういうものだと整理をしております。
○大平委員 答弁にあったとおりです。国にもともと入るはずだったとした財源も、これはサッカーくじの売り上げからのものであるということです。
つまり、財源スキームでは国が半分を持ちますと大きく見せ、そして、今度の改正案では国の取り分を三分の一から四分の一へと減らしますとしながら、しかし、その減少分はサッカーくじの財源なんだけれども国費の中に入れると。
一枚、配付資料を皆さんにお配りいたしました。ごらんいただきたいと思うんです。
結局、実態としては、サッカーくじの売り上げと東京都に整備費の大部分を賄ってもらうというものになっています。実際の負担割合は、二対一対一ではなく、そこに金額も書きました、国三百五十九億、東京都三百九十五億、toto財源八百二十七億という、これは一対一対二ではないか。
遠藤大臣、これは国民、都民にどのように説明されるんでしょうか。
○遠藤国務大臣 まず先に申し上げますが、かつて私は、このスポーツ振興くじの導入あるいは改定、そして特定納付のPTの座長をしておりました。そのときに、多くの皆さんに御協力いただいてスポーツ振興をしよう、地方のスポーツ振興あるいは強化、施設整備、そうした観点からスポーツ振興くじの利用を考えてまいりました。
そういうことを考えますと、今回、スポーツ振興くじ制度においては、売上金額から当せん払戻金及び運営費を控除し、さらに特定金額を控除したものの残額が収益となり、国庫納付及び地方公共団体、スポーツ団体への助成に割り当てることとしております。すなわち、この特定金額は、国庫納付金の減少、地方公共団体とスポーツ団体への助成金の減少によって構成されております。
これを踏まえて、今回の財源スキームでは、特定金額のうち国庫納付金の減少に当たる金額を国の負担と整理したものであります。具体的には、特定金額から総額四百三十二億円程度を国庫納付減少見合い分として国の負担の一部として整理をしており、その結果、国の負担は全体の半分である七百九十一億円程度としております。
○大平委員 いや、先ほどの内閣官房の答弁を繰り返しただけでした。
私は一つ疑問でした。サッカーくじの財源を三百九十五億円と想定しているのであれば、今度の法改正で、一年で百十億円入ることが見込まれているんだから、四年間で四百四十億円が見込まれ、これで賄えるではないかと思っていました。それなのに、一〇%へと引き上げる期間を八年間としています。そうではなくて、国費に入っている四百三十二億円も合わせた八百二十七億円を賄うために八年間必要なんだという説明を私はレクで初めて聞いて、驚いたし、納得もいった。極めてだまされた気分になりました。
こうしたやり方は、大臣、都民や国民に対して極めて不誠実だと言わなければなりません。
もう一度答弁をお願いします。
○遠藤国務大臣 新国立競技場については、国の施設でありますから、新整備計画に基づいて国が責任を持って整備を進めることでありますから、国が負担することが基本であります。
一方、東京都も、二〇二〇年東京大会の開催都市として、メーンスタジアムである新国立競技場が大会の準備や開催に支障なく整備をされ、大会後もレガシーとなるよう、全面的に協力をしていただいております。このため、東京都に負担していただくこととしているが、国と東京都の費用負担については、国の直轄事業の考え方に準拠して決定することが適当だと考えるため、国の負担額の半分の額を東京都が負担することとしております。
こうした観点から、スポーツ振興くじについても、独立行政法人日本スポーツ振興センター法にのっとって新国立競技場の整備等の費用を負担するものでありますが、競技力の向上や地域におけるスポーツ振興といった目的をそがない範囲で引き上げて、国の負担額の半分の額をスポーツ振興くじが負担することといたしました。
これらを合わせると、国、スポーツ振興くじ、東京都の負担割合は二対一対一になり、国の担うべき責任は十分果たしていると考えております。
○大平委員 全く答弁になっていない、全く都民、国民は納得しないと私は思いますね。
国が責任を持ってというのは私もそのとおりだと思うんです。
では、実際にこの整備費に対する国の負担はどうなるのか。七百九十一億円のうち、先ほどあった四百三十二億円はサッカーくじからの充当となる。では、残り三百五十九億円はどのように確保するんでしょうか。
○高橋政府参考人 ただいま御指摘いただきました約三百五十九億円のうち、二百三十四億円については、平成二十四年度補正予算、平成二十五年度当初予算、平成二十五年度補正予算、平成二十六年度の補正予算において、既に、国からJSCに対する政府出資金や運営費交付金により予算措置をされ、現在、JSCの特定業務勘定に確保されております。
残りの百二十五億円につきましては、今後の工事の進捗状況を踏まえ、スポーツ振興基金を取り崩して確保する予定としております。
○大平委員 七百九十一億円のうち、約半分をサッカーくじの売り上げから充当する、残りの部分についても、先ほどありましたスポーツ振興基金を取り崩して手当てすることとなっている、あとは補正予算などで既に確保している。
つまりは、総額が今後膨らまない限りは、もうこれ以上国の一般会計から支出することはないということでよろしいですか。
○高橋政府参考人 先ほど内閣官房の方からも答弁がありましたように、これらの経費については、消費税率が引き上げられた場合や、賃金または物価の大幅な変動に伴い、公共工事標準請負契約約款に準じた規定により請負代金が増額された場合においては追加負担が生ずることになっております。
これ以外の要因で工事費に追加負担が生じることは予定をしておりません。
○大平委員 いや、そういうことを聞いているんじゃなくて、もうこれ以上国の一般会計からの支出はないのかということを聞いたんですが、もう時間がないのでいいです。
つまり、もうこれ以上の支出はないのであります。
遠藤大臣がおっしゃられたとおり、そもそも国立競技場は国の施設であり、当然国費でその全額を整備するべきであります。
しかし、そこに、多様な財源でとのかけ声のもとに、サッカーくじを導入し、その売り上げと、そして東京都にも負担を負わせながら、建設費、整備費を捻出しようとしてきた。そうやって、国費、国の予算だけで賄わなくてもよいとしてきたことが、きょう冒頭にも指摘したような、千五百五十億円という巨額の建設費が許されていく要因になったんじゃないか。
費用の面で国の責任を果たしていないと言われても、遠藤大臣、仕方がないんじゃないでしょうか。御説明、どうですか。
○遠藤国務大臣 私は、昨年の七月、安倍総理からの白紙撤回の後に、関係閣僚会議の議長として推進室をつくり、その中で整備計画を策定いたしました。それは、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック大会のメーン会場として、開会式、閉会式、あるいは陸上競技、そしてサッカー大会、こうした大会が確実に安定して運営できるということを条件として整備計画をつくらせていただきました。それが、上限額が千五百五十億円であります。
その千五百五十億円をどのように負担をするかといったときに、先ほどありましたように、開催都市であります東京都、あるいはスポーツ振興のために設立されたサッカーくじ、スポーツ振興くじ、そして、国が二、そしてスポーツ振興くじが一、東京都が一というようなことで決定をしたわけでありますから、まずはその上限額をしっかりして、その上で配分を決定させていただいたということであります。
○大平委員 時間が来ましたので質問を終わりますが、まさに我が党がこれまで一貫して反対し続けてきた道、つまり、本来国が国費で確保するべきスポーツ振興のための予算を、専らくじの収益、つまりギャンブルに頼り、そして予算が必要になるたびにその拡大に走ろうとする、その道に今度の法案も進めようとしている。断じて認められないということを述べて、私の質問を終わります。
ありがとうございました。