高校生の政治活動を規制する通知は廃止を(3月9日文科委)
衆議院会議録情報 第190回国会 文部科学委員会 第2号
○大平委員 日本共産党の大平喜信でございます。
昨年の通常国会で、公職選挙法の改正が全会一致で決まりました。選挙権年齢が十八歳以上へと引き下げられました。そのことによって、十八歳、十九歳の全ての人たちが、私たちと同じように選挙権、投票権とともに選挙運動が行えることになりました。
そんな中、文部科学省は、昨年の十月二十九日、初等中等教育局長の名前で、「高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について」との通知を発出しました。
きょうは、この通知の内容と、この通知の発出によって現場でどんなことが起きているのか、またこれから起こり得るのかについて、馳文科大臣に質問したいと思います。
まず、冒頭、総務省に確認ですけれども、選挙運動、政治活動とは何でしょうか。
○大泉政府参考人 お答えいたします。
公職選挙法上、選挙運動とは、最高裁判所の判例などに基づきますと、特定の公職の選挙につき、特定の候補者に当選を得させるため投票を得もしくは得させる目的を持って、直接または間接に必要かつ有利な周旋、勧誘その他諸般の行為をすることをいうものと解されております。
一方、政治活動でございますが、これは、政治資金規正法などの定義規定などの表現から、一般的には、政治上の主義、施策を推進、支持し、もしくはこれに反対することや、公職の候補者等を推薦、支持し、もしくはこれに反対すること等を目的として行う直接間接の一切の行為をいうものとされております。
この中で、公職選挙法上におきまして、政治活動とはいわば狭義の政治活動を指しまして、先ほど言いました政治活動の中から選挙運動にわたる部分を除いた一切の行為をいうものと解されているところでございます。
○大平委員 公職選挙法上のという御答弁でしたが、先ほど、答弁にもあるとおり、最高裁の判決などあくまでも社会通念上の定義であり、法文上の定義ではありませんね。確認です。もう一度。
○大泉政府参考人 お答えいたします。
公職選挙法上に選挙運動という定義規定はございません。先ほど申しましたとおり、最高裁の判例などにより、先ほど申しましたとおりのことと解されているところでございます。
○大平委員 法文上の定義ではないということでした。
今の総務省の答弁の内容を、お配りしています配付資料の一枚目につけております。
これは総務省からいただいた資料をそのまま添付しておりますが、同時に、この資料は、総務省と文科省が共同で作成をし、今、全ての高校生と教員に配付をされている副読本「私たちが拓く日本の未来」にも同じ図表と説明が載っております。そして高校生たちへの説明がこれで行われております。
ところが、初等中等教育局長の通知で見ますと、そこに出てくるのは政治的活動という言葉であります。
局長にお伺いします。政治的活動とは何ですか。どこで定められたもので、どういう定義なのか、お答えください。
○小松政府参考人 お答えをいたします。
通知において政治的活動についての説明が記載されております。
特定の政治上の主義若しくは施策又は特定の政党や政治的団体等を支持し、又はこれに反対することを目的として行われる行為であって、その効果が特定の政治上の主義等の実現又は特定の政党等の活動に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉になるような行為をすることをいい、
というふうにしまして、「選挙運動を除く。」というふうにいたしております。
今御指摘がありましたように、政治活動と政治的活動と、用語が若干異なっておりますが、こちらは教育法規の系統に沿って用語を使わせていただきました。教育基本法に政治的活動という言い方になっております、この内容を踏まえたものでございますが、ただ、教育基本法につきましては選挙運動も入った概念になっておりますので、先ほどの狭い広いということでいいますと、それを除くというふうにしているというつくりでございます。
○大平委員 通知では政治的活動として説明をされており、副読本には政治的活動という言葉は一切出てこず、全て政治活動で説明をされています。先ほどの答弁ですと、ほとんど同じような趣旨、内容なのかなというふうに感じたんですけれども。
大臣にお伺いしたいと思うんですけれども、つまり政治活動と政治的活動というのは同じ定義なんですか、違う定義なんですか。お答えください。
○馳国務大臣 政治活動とは、政治資金規正法における表現などから、一般的には、政治上の主義、施策を推進、支持し、もしくはこれに反対することや、公職の候補者等を推薦、支持し、もしくはこれに反対することを目的として行う直接間接の一切の行為をいうものとされており、公職選挙法上の政治活動とは、この中から選挙運動にわたる行為を除いた一切の行為をいうものと解されております。
一方、十月二十九日の通知において、政治的活動の定義は、
特定の政治上の主義若しくは施策又は特定の政党や政治的団体等を支持し、又はこれに反対することを目的として行われる行為であって、その効果が特定の政治上の主義等の実現又は特定の政党等の活動に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉になるような行為をすることをいい、選挙運動を除く。
ものとしております。
○大平委員 先ほどの局長の答弁を繰り返しておられたんだと思いますが、同様の趣旨なのかなと思って聞きました。
高校生たちは副読本で政治活動として教えられ、教育委員会や学校では政治的活動と、この通知に基づいて指示をすることになる。今聞いても何だかよくわからない二つの言葉が入りまじっているな。
いずれにしても、そうした、法文上定義されていない言葉を今度の通知で改めて定義をして、高校生たちの活動を規制しようとしているのであります。
そこで伺ってまいりますが、今度の公職選挙法の改正によって、十八歳になった高校生たちも選挙運動ができるようになった。通知ではこのことをどのように書いているでしょうか。
○小松政府参考人 お答えいたします。
通知におきましては、「第三」というところで、
今回の法改正により、十八歳以上の高等学校等の生徒は、有権者として選挙権を有し、また、選挙運動を行うことなどが認められることとなる。このような法改正は、未来の我が国を担っていく世代である若い人々の意見を、現在と未来の我が国の在り方を決める政治に反映させていくことが望ましいという意図に基づくものであり、今後は、高等学校等の生徒が、国家・社会の形成に主体的に参画していくことがより一層期待される。
というふうに記載してございます。
○大平委員 十八歳になった高校生も選挙運動ができるようになり、学校もこれを「尊重する」というふうに通知では書いてあります。
配付資料の二枚目をごらんいただけるでしょうか。
これは、生徒、教員に配られている副読本の十三ページのコピーをしました。ここでも、図表、わかりやすいイラストも示しながら、「十八歳になれば選挙運動が可能です。」ということをはっきりと書いております。しかし、その一方で、この通知には、高校生の構内及び構外での選挙運動や政治活動への参加を制限、禁止するという内容にもなっております。
局長に伺います。
紹介をしていただきたいんですが、通知の「放課後や休日等に学校の構外で行われる生徒の選挙運動や政治的活動について」の(一)では何というふうに言っているでしょうか。
○小松政府参考人 お答えをいたします。
通知の御指摘の部分に、放課後や休日等の関係のことが記載してございます。御紹介いたします。
放課後や休日等に学校の構外で生徒が行う選挙運動や政治的活動については、違法なもの、暴力的なもの、違法若しくは暴力的な政治的活動等になるおそれが高いものと認められる場合には、高等学校等は、これを制限又は禁止することが必要であること。また、生徒が政治的活動等に熱中する余り、学業や生活などに支障があると認められる場合、他の生徒の学業や生活などに支障があると認められる場合、又は生徒間における政治的対立が生じるなどして学校教育の円滑な実施に支障があると認められる場合には、高等学校等は、生徒の政治的活動等について、これによる当該生徒や他の生徒の学業等への支障の状況に応じ、必要かつ合理的な範囲内で制限又は禁止することを含め、適切に指導を行うことが求められること。
以上でございます。
○大平委員 配付資料の三枚目に、今の通知の抜粋を載せております。
放課後や休日に学校の構外で生徒が行う選挙運動や政治的活動について、違法なもの、暴力的なもの、そのおそれが高いと認められる場合とともに、学業や生活などに支障があると認められる場合には「必要かつ合理的な範囲内で制限又は禁止する」としています。
順番は前後したんですが、その(二)には、先ほど、一つ前の答弁で言っていただいた、選挙運動は、学校は「尊重する」というふうに書いてある。
一方では尊重すると言い、もう一方では規制すると言う。大臣、これは矛盾しないでしょうか。
○馳国務大臣 高校は学校教育法などに定める目標を達成するべく生徒を教育する公的な施設であることなどを踏まえると、高校生の政治的活動等は、必要かつ合理的な範囲内で制約を受けるものと考えております。
通知の第三の三、(二)にあるとおり、満十八歳以上の生徒が適法に行う選挙運動が尊重されることと、違法なもの等を初め、通知の第三の三、(一)にあるとおり、一定の場合に必要かつ合理的な範囲内で制約を受けることは矛盾するものではないと考えております。
○大平委員 この通知にもあるんですけれども、違法なもの、あるいは暴力的なものというのは、政治活動であろうとなかろうと当然取り締まりの対象でありますし、それは高校生であっても大人であっても当然取り締まられるべきものであり、それが政治活動全般の制限の理由に私はならないと思うんです。
通知を読んだ高校生から私はお話を伺いました。選挙権の引き下げをしながら、選挙運動、政治活動はするなというのは意味がわからない、政府は私たちに投票に行ってほしくないんですか、そういう率直な疑問、不満を話しておられました。
果たして合理的かどうか、この通知の内容をさらに突っ込んで聞きたいと思うんですけれども、この政治的活動というものに高校生たちの一つ一つの行いが当てはまるのか否かを、現場で一体誰がどのように判断するんでしょうか。
○小松政府参考人 お答え申し上げます。
生徒に対する具体的な指導のあり方等は、学校の設置者並びにその委任を受けた学校長が適切に判断するものでございます。
個々の活動については、一般的に、学校長が個別の事情に応じて判断してまいります。その際、校長は、学校における生徒の日常の状況を観察したり、もちろん、必要に応じまして聞き取りを行うなど手段を講じまして、適切に判断をするということになります。
○大平委員 では、この通知にもあります、制限、禁止の対象になる「学業や生活などに支障があると認められる場合、」というのは、どういうケースを指すんでしょうか。
○小松政府参考人 お答え申し上げます。
活動を行っている生徒自身の場合につきまして、「学業や生活などに支障があると認められる」ケースといたしましては、例えば、授業を欠席して自身が支持する政治団体の主催する集会に参加をするとか、あるいは、政治活動等に没頭して夜遅くまで頻繁に電話やメールをすることが続き、結果として、家庭での学習を怠り学業に影響が出たり、昼夜逆転の生活により授業への集中力を失ったりしている場合等を想定しております。
それからまた、通知には他の生徒との関係が言及してございます。こういった点におきまして、「他の生徒の学業や生活などに支障があると認められる場合、」といたしまして、例えば、特定の政策を支持する集会への参加を要請するため、自宅にいる他の生徒に対して夜遅くまで頻繁にメールや電話をし、当該生徒の認識や社会通念を踏まえれば、当該生徒の学業や生活に悪影響が出ていると判断される場合、特定の政策に賛成する先輩が部活動での人間関係を利用して後輩に集会への参加を強要する場合というようなことが想定されます。
これらは、先ほど申し上げましたように、学校長がその指導に当たって個別に判断をすることとなりますので、お尋ねに従いまして、一つの想定例を御紹介さしあげる次第でございます。
○大平委員 先ほどの答弁にありました「学業や生活などに支障があると認められる場合、」のケースとして御紹介があった、夜遅くまで電話やメールなどをして寝不足になって、授業への集中力がなくなったりする場合だと。
その理由が政治活動への参加かどうかをどうやって判断するんでしょうか。
○小松政府参考人 個別のケースについてのお尋ねになりますと、一般論としてこの場合がそうだといったことを一律の基準として立てることにはなじまないかと思います。
生徒に対する具体的な指導のあり方、先ほど申し上げましたように、教育上の権限を有します学校長が適切に判断をするものでございまして、個々の活動については、一般的に、学校長がそれぞれの事情に応じて判断をいたします。その判断材料として、適切を欠かないように、観察や聞き取り等適切な手段を講じて判断をするということになります。
○大平委員 観察や聞き取り等を行って丁寧に対応するということだったかと思います。私も、そのとおりだと思うんですね。
つまり、現場の先生たちというのは、こうした通知があろうとなかろうと、そしてそれが政治活動が理由かどうかを問わず、例えば、クラスの生徒の中に、寝不足が続いて授業に集中できていない子がいれば、その状況があるというふうに見れば、声をかけて、よく話を聞いて相談に乗るというふうに、どんな先生たちもやると思うんですね。
それを、何だか、この通知でもって、政治活動だけは何かいかがわしいものかのように扱って、制限、禁止することも含めてなどとも言いながら、指導しているわけです。
私は、結局この通知は、政治活動への参加への、高校生たちに対する、萎縮させる効果しか果たさないようなものになるんじゃないかと思うわけです。
つまり、ここまでの答弁でも明らかになったと思います。高校生たちの一つ一つの行いが政治的活動に該当するか否か、あるいは学業への支障が政治的活動への参加であるか否かを、しかも校長が判断する、このこと自体、私はそもそも不可能じゃないかと思うわけです。
それでも、構内の活動ならば、目の前に生徒がいるわけですから、その状況を見てわかるかもしれない。この通知がさらに制限の対象としている休みの日の構外での活動が、その学校の全校生徒の活動が、その一つ一つが政治的活動に当てはまるのか否か、これはどうやって把握し、判断するんですか。
○小松政府参考人 お尋ねの趣旨、態様、程度がどの程度のどういう状況を指すかが少しわかりにくいところがございますけれども、学校において、構外、すなわち、休日あるいは放課後、それからまた場所が学校の構内でないところにおいて生徒の生活や活動が行われる中で、どのように生徒指導を行うか、あるいは構外指導も含めてどのように対応するかということは、学校教育の適切で円滑な遂行の観点から指導する、あるいは把握をする、そして指導助言をするということは日常行われるところでございまして、政治的活動についてもそれは行われるということでございます。
○大平委員 ちょっとよくわからない答弁なんですけれども。
構外での休みの日の高校生たちの活動を把握するためにということなんでしょうか、今各地で検討されているのが届け出制の問題です。高校生たちが休みの日の構外での選挙運動や政治的活動に参加する場合に、事前に学校に届け出をしなければならないというものであります。そして、それに対して、文科省も、適切な配慮をすればよしと認めております。
一般論で結構ですが、届け出といった場合、何を学校に届けることになるんでしょうか。
○小松政府参考人 お答え申し上げます。
一般論になりますが、ただ、通知や、関係のいわゆるQアンドAと言われるものによって私どももお示しをいたしておりますけれども、まず、放課後、休日等に学校の構外で行われる高等学校等の生徒による政治的活動等は、家庭の理解のもと、当該生徒が判断し行うものでございます。それと同時に、先ほど申し上げましたが、このような活動も、高等学校の教育目的の達成等の観点から必要かつ合理的な範囲内での対応という対象になると解されます。
高校生の政治的活動等に係る指導のあり方は、個別のケースに応じて学校において判断をされることでございますので、私どもとしても、届け出を要するという措置にするか否か、また、そうした場合に必要な届け出事項はこれであるというようなことを一律に決めるということはいたしておりません。
したがって、政府としてこれがそうだということをお示しすることは適切ではないと思いますけれども、生徒からの届け出の内容として一般的に想定されるものといえば、例えば、活動の日時とか場所とか、あるいは参加する活動や団体の名称等とか、そういったものが考えられると思います。あくまでも一般論でございます。
○大平委員 日時、場所、名称などを届けるのが一般的には届け出の内容になるだろうという御答弁でした。
大臣にお伺いしたいと思うんですが、これから夏の参議院選挙にもなれば、現実的に想定されると思います、選挙期間になって、例えば、今度の日曜日、うちの町の駅前に安倍首相が来て街頭演説を行う、それを聞きつけた高校生がぜひ聞きに行きたいと思って、街頭演説といえば当然政治的活動ですから、届け出が必要になります。学校に、今度の日曜日、駅前で安倍首相の街頭演説に行きますというふうに届け出をすることになりますかね、大臣。
○馳国務大臣 私もよく選挙区で街頭演説をしておりますが、よく小学生や中学生や高校生が立ちどまって聞いておりますので、言葉を選ぶように気をつけております。
今お尋ねの点でありますが、届け出をさせる場合の具体的な指導のあり方は、高等学校の教育目的の達成の観点から、個別のケースに応じ、必要かつ合理的な範囲内のものとなるように、各学校等において適切に判断することが必要と考えております。
一般論としては、街頭演説を聞くことは教育上の支障がないものもあると考えておりますが、具体的な指導のあり方は各学校等において適切に判断されるものであります。
○大平委員 街頭演説は政治的活動に当てはまらないのかどうか、今の大臣の御答弁は当てはまらないということなんでしょうか。では一体何が政治的活動なのかというこの定義がいよいよ曖昧であり無制限であるじゃないかということも感じるわけです。
しかし、先ほど来の答弁にあるとおり、一義的に責任は学校長にあるということですから、学校長が判断する、街頭演説が、必要だと判断すれば当然必要になるということになると思いますね。
しかし、選挙期間の日曜日ともなれば、先ほど大臣がおっしゃったとおりです、終日あちこちで街頭演説が行われ、皆さんもきっと行うと思いますが、その一つ一つを事前に全て学校に届け出るということはまず不可能であります。
例えば、日曜日、家族四人が一家で買い物に出かけた、家電量販店に出かけたら、そこである政治家が街頭演説をしていた、お父さん、お母さんは当然聞いてみようということで聞く、大学生のお兄ちゃんも当然聞いてみようということで聞く、しかし、高校生である本人だけは、学校が届け出制を取り入れており、これは未届けだからということで、真面目に受けとめまして、僕だけ帰るわということになってしまいかねない。
街頭演説一つを例にとっても、私は、この通知あるいは届け出制というのは、そんな滑稽なことを高校生に押しつけるものになるんじゃないかということを言いたいと思います。
さらに大臣にお聞きします。これはちょっと通告していないんですけれども、自民党は何歳から加入することができるでしょうか。自民党の党員になるには何歳からなれるでしょうか、党員資格の。(発言する者あり)
○馳国務大臣 申しわけありません。私は、二十から、つまり成人してからだと思っておりましたが、今ほど理事に聞いておりましたら、十八というふうに言っておりますので、そうだと思います。済みません。
○大平委員 そうだと思います。私たち共産党も十八歳から加入をすることができます。
政党に入るという行為は、これこそこの上ない政治活動、政治的活動だと思いますが、これも一例です、届け出制というのが我が高校に導入をされれば、この十八歳の高校生は、例えば自民党に入党するときに、学校に、入党する、したいと届け出ることになるんでしょうか。
○馳国務大臣 一般論として、政党、政治団体への加入が直ちに学校教育に支障を来すとは私は思えませんが、例えば、同様な政党の名前をかたって勧誘するというような事案も考えられないわけではありませんので、基本的に、これは、私が大臣としてというよりも、やはり学校長が適切に判断されるというふうにすべきだと思っています。
○大平委員 さまざまな例を挙げさせていただきました。
明らかだと思いますのは、いずれにおいても、この文科省の通知を厳格に実践し、届け出制を行えば、こんなおかしなことがあちこちで私は起こると思うんです。そういう仕組みだからこそ必ず、私は、高校生たちにとって、さまざまな選挙運動、政治活動への参加が萎縮されてしまうことになる、このことをはっきり述べておきたいと思うんです。
配付資料の四枚目、ごらんをいただけるでしょうか。これは、愛媛県の教育委員会が昨年の十二月一日、県下の公立高校五十九校の教頭らを招集し、そこで配付された、校則改定のひな形となる「政治的活動等に対する生徒指導に関する校則等の見直しについて」であります。
ごらんになってわかるとおり、ここには、海外旅行やキャンプ、登山などに行く場合と同様に、選挙運動や政治的活動への参加の場合にも許可、届け出が必要だ、一週間前に保護者の許可を得て担任に届け出るとされています。この文書の末尾には、「以上のとおり、改訂いたしました。」との文言が既に印字をされていまして、学校長が右上の空欄のところに署名、押印をすれば、そのまま県教委への提出文書となる形態をとっています。
こういうことが現実に全国各地で起こっているのであります。大臣、本当にこんなことを認めるんでしょうか。お答えください。
○小松政府参考人 恐れ入ります。事実関係だけ先にちょっと申し上げさせていただきます。
愛媛県の教育委員会において、ただいま御指摘のような校則改定を指示したというような報道があるということは、私どもも接しております。
この報道された生徒心得における許可制といったようなことの意味するところは定かではありませんけれども、私どもが伺っているところでは、愛媛県では、私どもQアンドAを出しておりますけれども、これを踏まえて、再度学校現場にひな形を示しておられ、その中では、構外の活動について許可制を行うような文言は削除したものと聞いております。
これだけ一応先に補足させていただきます。
○馳国務大臣 文部科学省が作成したQアンドAでは、届け出制について、放課後、休日等に学校の構外で行われる高等学校等の生徒による政治的活動等は、家庭の理解のもと、当該生徒が判断し行うものであるが、このような活動も、高等学校の教育目的の達成等の観点から必要かつ合理的な範囲内で制約を受ける、高校生の政治的活動等に係る指導のあり方については、このような観点からの必要かつ合理的な範囲内のものとなることが必要であり、例えば、届け出をした者の個人的な政治的信条の是非を問うようなものにならないようにすることなどの適切な配慮が必要としているところであります。
届け出制については、こうした考え方を踏まえつつ各学校等において適切に判断することが必要なものであり、その一環として生徒の政治的活動等について届け出をさせることはあり得るものと考えております。
○大平委員 大臣は、所管に任せると繰り返し答弁をされています。
こうした愛媛のような県がある一方で、幾つかの都道府県教育委員会では、構外の政治活動は、家庭の理解のもと、生徒が自主的に判断して行うものとして、届け出制は不要だと判断しているところも生まれております。つまり、ある県では届け出が必要で、例えばその隣のある県では届け出は必要ない。さらに言えば、同じ県内あるいは同じ自治体の中でも、A高校は届け出が必要で、B高校は届け出が必要ないということが当然この仕組み上起こってくるわけです。
そうした場合、また例を出して申しわけないですけれども、A高校とB高校の友達二人組が日曜日、町に出て、たまたま何かのデモに遭遇した、内容に大きく共感したので、このデモに飛び入りで参加したいと思っても、届け出のないA高校は、参加が自由にその子の自主的判断でできて、届け出が必要だというB高校の生徒、もう一人の友達の方は、このデモに参加したいと思うが、未届けだから、真面目に実践して、参加できなかったということがこの仕組みのもとでは必ず起こり得る。
これは余りにも不合理ではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
○馳国務大臣 各学校の状況に応じ、生徒指導のあり方が異なることはあり得るものと考えております。
○大平委員 余りにも無責任な答弁だと言わなければなりません。
文部科学省が発出した通知によって、こうした届け出制を今各地で学校は真面目に検討しているんだと思うんです。そして、資料にもあるとおり、既に現実に校則にまで書き込まれようとしています。高校生たちの休みの日の過ごし方にまでこうした極めて不当な制限が加えられるようなことは断じて認めるわけにはいかないと私は言いたいと思うんですね。
先ほどから大臣は、政治的信条の是非を問うものにならないようにという御答弁がありました。そんなことは私は当たり前だと思うんです、大前提だと思うんです。政治的にこの取り組みはよくてあれはだめだということを学校が指示するなんて許されるはずがない。
そうではなくて、問題は、どういう活動に参加するのかということそのものを言わない自由があるじゃないかということなんです。それが、内心の自由、思想信条の自由など、憲法の規定が保障されているということじゃないでしょうか。届け出制は、この話の冒頭に答弁があったとおり、いつ、どこで、何に、日時、場所、何に参加するのかを言わなければならないわけで、その時点で内心の自由を根本から脅かすものになるんじゃないでしょうか。
大臣のお考えはどうでしょうか。
○馳国務大臣 文部科学省としては、生徒の自主的な活動を上から抑えつけるという意図は全くないところでありますが、そうしたことも踏まえつつ、高等学校の教育目的の達成等の観点から必要かつ合理的な範囲内の対応となるように、各学校等において適切に判断するものであると考えております。
○大平委員 届け出制を導入したら、憲法が規定する内心の自由、思想信条の自由を脅かすのではないかという質問をしています。お答えください。
○馳国務大臣 そういう意図は全くありませんし、内心の自由を脅かすものではありません。
○大平委員 届け出制が導入されれば、真面目に実践しようと思えば思うほど、いつ、どこで、何に参加するのかを言わなければならないと高校生たちは思うわけです。憲法の規定と届け出制は決して両立し得ないと私ははっきり述べておきたいと思います。
日本国憲法の規定に加え、日本も批准をしている子どもの権利条約では、十八歳未満の子供を独立した人格として尊重し、子供が自分自身にかかわることに意見を表明する権利を保障しています。つまり、子供たちが決して年齢や立場で差別されることなく、当然高校生たちも政治活動の自由が保障されるべき、この点から見ても、今度の文科省通知はきっぱりと撤回すべきだということをはっきり申し上げて、次の質問、最後の質問に移ります。
私の地元、広島県の呉市で、先日、市立中学校が来年度から使う歴史、公民の教科書の選定時に使われた資料に誤りがあることを、市民の有志の方が公文書公開請求で資料を入手し調べる中で発見されました。二月十七日に呉市の教育委員会は会見を開き、数カ所の誤記があったことを認め、全容の把握をした上で三月三日に臨時の教育委員会議を開き、報告をすると述べました。
三月三日の報告の概要を説明していただけますか。
○小松政府参考人 お尋ねの件でございますが、報道等を踏まえまして、広島県教育委員会を通じて確認したところを申し述べますので、若干不正確なところがあれば御容赦をお願いいたしたいと存じます。
私どもが把握しておりますところによりますと、三月三日に臨時の教育委員会が開催され、歴史、公民の、これは一冊の教科書ということではなくて全体でございますけれども、研究資料に計一千五十四カ所の誤りがあったことが報告されたということと、その上で改めて審議を行い、調査研究資料の誤りは採択結果それ自体には影響を及ぼさないことについて、教育長、教育委員全員の方々の意見が一致したところと伺っております。
○大平委員 二月十七日の会見では数カ所の誤記、点検ミスと言っていたのが、全容を調べてみると何と千五十四カ所もの誤りがあったとのことでした。驚きの事実であります。しかも、発見されたのは、市民の有志の方が公文書公開請求をし、調べる中で初めてわかったことでした。
一つ確認したいのは、情報の公表の問題です。
教科書採択という大切な事柄がどう審議されているのかもわからないのでは、教育行政に対する信頼にかかわることだと思います。誰もが見られるように公表を促していくべきだと考えております。
局長に確認ですけれども、今、最新の数字で、市町村教育委員会の採択にかかわる議事録、選定委員会の議事録、調査研究資料の公表をされている割合はどのくらいになっているでしょうか。
○小松政府参考人 お答え申し上げます。
教科書採択に当たっては、採択権者である教育委員会等によって十分な調査研究を経た上で、その地域の実情に即した教科書を採択することが必要でございますけれども、それとともに、保護者や地域住民の方々に対して採択の結果や理由等について十分な説明責任を果たし、教科書採択に関する信頼の確保に努める必要があるというふうに考えております。
その観点から、関係の規定がございまして、通知等により、その意義、趣旨の周知に努めているところでございます。
平成二十六年度の教科書採択状況調査によりますと、採択に係る教育委員会の議事録を公表している市町村教育委員会が全体の約四二%に当たります七百三十二市町村。選定委員会、これは必置のものではございませんけれども、設けている場合の議事録を公表している市町村教育委員会は、選定委員会を置く市町村のうち約三〇%に当たる二百十一市町村。それから、調査研究資料を公表している市町村教育委員会は、調査員等を置く市町村のうち約三六%に当たります六百十三市町村にとどまっております。全部というわけではございません。
○大平委員 大臣に最後、お伺いしたいんですが、教科書採択は綿密な調査研究を行った上で適切に行われ、採択に関する保護者や市民の信頼の確保に努める必要があると文科省も繰り返し述べてこられました。
この点で、今度の呉市教委の問題はどうだったのか。一千カ所を超えるミス、しかも、それが市民の調査で初めて発見された。私は、これでは保護者や市民の理解は得られないし、採択への信頼も揺らいでいるというふうに考えますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。
○馳国務大臣 教科書採択というのは法律によって定められた作業ということでありますから、私は、できる限りその情報が公開されることがやはり当然だとまず思っております。法律上は努力義務となっておりますけれども、やはり公開されることが望ましいと、まず基本的な認識を申し上げた上で、呉市教育委員会における歴史、公民の教科書に関する調査研究資料に多数の誤りがあったということに関しては、率直に申し上げて、望ましいものではないと考えております。
広島県教育委員会を通じて確認した限り、調査研究資料の誤りは採択結果それ自体に影響を与えるものではなかったと聞いておりますが、御指摘のように、保護者や地域住民等に教科書採択に対する不信感を抱かせてしまったのであれば、採択権者である呉市教育委員会において説明責任を果たしていただくとともに、今後同じような誤りが起こることのないよう、再発防止に向けて、調査研究の方法、体制等について見直していただくことが重要であると考えており、しっかりとした対応が行われることを期待したいと思います。
○大平委員 大臣におっしゃっていただいたとおり、事は、子供たちが三年間学ぶ教科書を選ぶという大変重要な問題です。こうした極めて無責任なずさんなやり方では、保護者、市民は決して納得しないということも改めて申し上げまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。