国会質問

2015年09月15日

全国学力テストの高校入試活用を批判(9月2日文科委員会)

文科委~2 日本共産党の大平喜信衆議院議員は9月2日、衆院文部科学委員会で、学校施設整備の推進を求め、全国学力テストの問題点を指摘し、実施しないよう求めました

 

189-衆-文部科学委員会-18号 平成27年09月02日

○義家委員長代理 次に、大平喜信君。

○大平委員 日本共産党の大平喜信です。
 私はまず、学校施設の整備事業にかかわって質問したいと思います。
 今年度、学校施設の整備にかかわる国の補助事業である学校施設関係改善交付金、これを活用したいと全国の地方自治体から希望のあった事業が何件あり、その採択件数、未採択件数を教えてください。

○中岡政府参考人 お答えいたします。
 今年度の学校施設環境改善交付金を活用したいと希望のあった主な事業件数は約一万二千事業でございまして、うち、採択された事業件数は約一万事業、未採択となった事業件数は約二千事業となってございます。
    〔義家委員長代理退席、委員長着席〕

○大平委員 約二千件の未採択事業の主な内容とその未採択の理由、あわせて、その中には入っていないとされる給食センターの希望のあった数、採用数、未採用数を教えてください。

○大平委員 耐震化事業を優先したという答弁でした。もちろん耐震化事業は重要です。ただ、それが、空調設備、トイレ、給食センターという、こちらもなくてはならない設備の改修ができないことの理由には私はならないと思います。しかも、二千件を超える未採択というのは、調べてみますと、この数年で見ても飛び抜けて多い数字であります。
 この間、この問題で私は、地元を初め全国各地からたくさんの問い合わせが寄せられています。
 例えば、山口県の下松市では小学校の給食センター建設事業の国の補助が未採択となり、その分、自治体の負担になっているとの訴えが寄せられました。
 空調設備でも、岡山県の津山市で中学校へのエアコン設置に国の補助がつかず、愛知県犬山市からは、ことし六月の議会で我が党の議員が小中学校のエアコン設置について質問したところ、市長からは、今年度、中学校の音楽室にエアコン設置の予算を計上しているが、国の補助金が交付されないことになったという答弁があり、担当課に聞きましたら、今年度は耐震工事を推進するため交付できないとの国からの通達があったと答えています。
 また、島根県のある市では、我が党議員が小中学校普通教室へのエアコン設置を求めたのに対し、市長は、厳しい財政状況では考えていないと言いつつ、子供たちの忍耐力を育むことも教育の役割として大切、こういう答弁もしたといいます。自治体の財政難の上に国の補助が期待できない中で、こうして子供たちに精神論にすりかえるようなそうした我慢を強いる、そんなことも行われています。
 いずれにしても、二千件を超えるような事業が未採択になったのは決して見過ごすことはできません。きっとその事業の多くが、ことしのこの夏休みのうちにやってしまいたいものであったと思います。
 ぜひ大臣、来年度と言わず、すぐにでもこの問題に手を打っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○下村国務大臣 御指摘のように文部科学省としては、子供たちの教育環境の改善を推進する観点から、地方公共団体からの要望にできる限り応えていきたいと考えておりまして、具体的な要望を踏まえつつ、必要な支援について努めてまいりたいと考えております。
 平成二十八年度の概算要求におきまして、地方公共団体の要望を踏まえ、二千八十九億円を要求したところであり、この要求額を確保できるよう、まずはしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

○大平委員 ぜひともよろしくお願いしたいと思います。
 続きまして、全国学力・学習状況調査、いわゆる全国学力テストの問題について質問したいと思います。
 八月二十五日、ことし四月に実施された二〇一五年度の全国学力テストの結果が公表されました。九年目となることしの調査では、全体として学力の底上げが図られ、地域格差が縮まる傾向にあることなどが報じられました。
 大阪では、学力テスト実施の十日前になって突然、テストの結果を公立高校入試の内申点に反映するという方針を決定し、府内はもとより、全国に大きな衝撃を与えました。そして、そのことを示した上で取り組んだ今回の大阪府の結果は、例えば、中学校の数学Aで昨年の四十二位から二十一位へと、数学Bで四十位から二十位へと大きく引き上がりました。
 文部科学省にお尋ねしますが、大阪府がここまで急激に平均正答率が引き上がったのはどういう理由からなのかと分析をしているでしょうか。

○小松政府参考人 お答えを申し上げます。
 本年度の調査結果における大阪府の状況を拝見いたしますと、中学校では全ての教科区分で、これは、国語、数学は昨年度との比較、理科は三年ぶりでございまして、平成二十四年度と比較になりますけれども、全国平均との差が改善をしているということが見てとれます。
 この状況につきまして、本調査の結果から大阪府の中学校における指導状況を分析してみますと、二十六年度と比べまして、授業の冒頭で目標をきちっと示す活動、それから、授業の最後に学習したことを振り返る活動といった、授業の目的を明確化した指導に取り組む学校の割合というのがふえております。
 それからまた、現在の学習指導要領ではいわゆる言語活動というものを重視しておりますけれども、各教科等の指導の狙いを明確にした上で言語活動を適切に位置づける、あるいは、さまざまな考えを引き出したり思考を深めたりするような発問や指導を行うといったような言語活動の重視がふえているわけでございます。こうしたことが寄与している可能性はございます。
 それから、大阪府教育委員会から昨年度からの実施とした事柄というのを伺ってみますと、課題の多い市町村について府教育委員会からの計画的な指導、助言を行う、それから、府独自の学力テスト等を通じた中学校一、二年生の総復習をやる、そして、調査結果を高校入試の調査書の評定の学校間調査に用いるといったような、さまざまな事柄が行われております。これがどのように影響したかは、今後それらの検証を行うと聞いております。
 いずれにしても、一つの項目を一対一で結びつけることは私どもとしても今の時点でなかなか難しいと思いますけれども、こうした学力調査につきまして、本来の目的に沿って、学校教育法上の目的を踏まえて、しっかりとした学力が身についていくということを期待したいと思っております。

○大平委員 さまざまな要因、いろいろな要因があるという御答弁でしたが、大阪の当人の皆さんは極めてはっきり述べておられます。結果が発表された翌日の新聞各紙によれば、松井大阪府知事は、内申点に反映されるので子供が本気で取り組んだんだろう、やればできることがはっきりしたと述べ、府教委の幹部と言われる方からは、従来は笛吹けど踊らずだった、組織的に学力テスト対策を徹底する自治体が多い中、大阪もやっと追いついてきたと述べておられるそうです。
 一体、全国学力テストというのは何のための取り組みなのかという根本的な疑問、疑念を感じずにはおられません。
 文科省にそもそもの確認なんですけれども、全国学力テストの結果を一人一人の子供たちの内申点に反映させるなどの、高校進学への合否に直結するような活用を認めているのでしょうか。

○小松政府参考人 お答え申し上げます。
 全国学力・学習状況調査は、国としては、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握、分析し、教育施策の改善充実に生かすということ、それから、教育委員会としては、自治体や学校の学力水準を検証し、教育委員会の施策の改善充実に生かしていくこと、そして各学校としては、個々の児童生徒の学習状況を把握して指導に生かすとともに、学校全体として指導方法の検証、改善につなげるということが目的で実施しております。
 そういうことで、調査結果の活用の方策として、高等学校入学者選抜など、生徒個人の進路にかかわる資料としても用いるということは認めておりません。
 このことは、平成十九年度に調査を開始するに当たりまして各都道府県教育委員会に示しておりまして、それを前提といたしまして、各教育委員会、市町村教育委員会等と一緒になりましてこの調査を実施してきているということでございます。

○大平委員 認めていないという御答弁でした。
 そうであるにもかかわらず、今回、大阪府教委が四月十日にこうした方針を発表しました。
 文部科学省として、これまでのこの約四カ月間、大阪府教委とどういうやりとりをしてきたのでしょうか。

○小松政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、大阪府教育委員会におきまして、ことしの四月十日、府内の公立高校入試における調査書の評定の学校間調整に全国学力・学習状況調査の結果を用いることを決定したということでございました。これを受けまして、その経緯や内容につきまして四月十五日に説明を受けたところでございます。
 その際、文部科学省からは、調査結果の使用の仕方につきまして調査の趣旨を逸脱する懸念があるということ、それから、調査の適切な実施や学習指導への影響に関する懸念があることをお伝えをいたしまして、説明を求めるとともに、今年度の調査が適切に実施されるよう必要な対応を行って、その状況について検証することをお伝えをいたしました。
 大阪府教育委員会からその後、七月一日に本年度調査の実施状況の検証結果について報告がなされまして、それとともに、大阪府教育委員会の、決定した調査結果の使用について、本調査の趣旨を逸脱するものではないと考える旨の説明がされております。
 文部科学省といたしましては、こうした大阪府教育委員会の御説明も踏まえつつ、七月十七日には、有識者会議の取りまとめで趣旨を逸脱するとの見解が示されましたので、七月二十八日に、それも踏まえて大阪府教育委員会と協議を行いました。大阪府としては意見は変えないとのお立場でございました。
 これらを受けまして、八月二十日に、府知事の御希望によりまして文部科学大臣との会談が持たれ、改めて大臣から、調査結果を高校入試に関係させて用いることは基本的に認められない旨を伝えたということでございます。

○大平委員 今度の大阪府教委の決定と文部科学省の対応に対して、多くの批判や懸念の声が広がっています。本来の趣旨を逸脱し、少なくない現場の先生方や保護者の皆さんの不安や反対意見があるにもかかわらず、耳を傾けず決定した大阪府教委とそれを容認した文部科学省に対して、私も強く抗議をしたいと思います。
 来年度以降は今回のような活用を認めないと大臣はおっしゃいましたが、具体的には、どういう方法で今回のような事態が生まれないように対応されるおつもりでしょうか。

○下村国務大臣 今申し上げたように、八月二十日に松井府知事が来庁された際に、平成二十九年度以降の入試で全国学力調査の結果を用いることについては、調査の趣旨に反するため認めないということは伝えておりまして、このことを守っていただきたいと考えております。
 なお、大阪府教育委員会は、高校入試における調査書のいわゆる絶対評価の公平性の確保のため全国学力調査を用いることとしていますが、他の都道府県においては、十年前までには高校入試の調査書に絶対評価を導入しているというところであり、これまで全国学力調査を用いたことはない。つまり、今回、大阪は、一人一人の生徒ではなくて学校ごとの絶対評価のためにこの全国学力テストを使うということであったわけですが、ほかの四十六都道府県は、十年前にそれはもう既につくっているということであります。
 そして、今月の三十日に開催する各都道府県の高校入試の担当者会議におきまして、各都道府県における取り組みに係る情報を交換、共有することとしておりまして、それを参考にすれば、大阪においても二十九年度以降は、これは全国学力テストを使う必要は全くない、そもそも趣旨に反するということで説明をいたしました。
 それらの状況を踏まえ、来年度の全国学力調査の実施に向けた必要な措置を、大阪の動向も踏まえながら検討していく必要があるのであれば、さらにきちっと検討していきたいと思います。

○大平委員 今の御答弁で来年度以降の歯どめになるのかということを極めて疑念に感じますが、私は、そもそもは、文部科学省のこの間の学力テストの結果の扱いについての姿勢に大きな問題があるのではないかと感じています。
 文部科学省は、学力テストについて、調査により測定できるのは学力の特定の一部分だ、学校における教育活動の一側面である、そして、序列化や過度な競争が生じないよう、教育上の効果、影響等に十分配慮することが重要だと実施要項で示しているにもかかわらず、都道府県ごとの平均正答率を公表し、さらには市町村ごとの公表、さらには学校ごとの公表まで認めてきました。
 なぜそうした公表を行い、認めてきたんでしょうか。

○小松政府参考人 お答えをいたします。
 まず、全国学力・学習状況調査のこの調査結果につきましては、国としては、一つには、国全体の学力水準の状況について説明責任を有しております。その観点からは、全国平均だけを示すのでは十分ではなく、地域的な状況等を確認する観点も必要でございまして、都道府県単位程度の状況について公表することは、これは必要であるというふうに考えているわけでございます。
 他方で都道府県は、その規模、例えば域内の広さとか児童生徒数とか学校数とか、そういったことを考慮いたしますと、規模が大きく、さまざまな地域を包含するということから、公表した場合に弊害が生じるおそれは小さいと考えられます。
 これら、説明責任やその影響等を総合的に勘案をいたしまして、都道府県別の結果を公表するということにしているところでございます。
 それから、この調査は、保護者の方や地域住民の方々の関心の高い、学校教育の改善のために実施をしているという性質でございます。保護者や地域住民の方々に対して、国、教育委員会、学校がそれぞれ説明責任を果たすということも重要である一方、序列化や過度な競争による弊害が生じないようにするといった教育以上の効果や影響等に十分配慮する必要がございます。
 その双方の観点を踏まえまして、平成二十六年度の調査から、市町村教育委員会は、それぞれの判断で学校の結果の公表を行うことができる、都道府県教育委員会は、市町村教育委員会の同意を得た上で市町村や学校の結果を公表できるということにいたしました。
 そして、学校の結果の公表につきましては、学校の設置管理者、かつ、調査の参加主体であり、学校の結果の最終的な責任と域内の教育の状況に関する説明責任を持っております市町村教育委員会が基本的には判断することが適当というふうに考えております。
 文部科学省といたしましては、各教育委員会において、教育上の効果や影響を踏まえて、地域の実情に応じて、適切にその説明責任を果たす方法を判断していただきたい、そのための留意事項等も付してお願いをしているという立場でございます。

○大平委員 いや、まさにそういう姿勢が、そして公表を進め認めてきた結果として、この学力テスト、回を重ねるごとに教育を大きくゆがめる弊害が生まれ、まさに、序列化や過度な競争が生まれているんじゃないでしょうか。
 今、各学校が教育活動の充実というお話がありましたけれども、この学力テストの平均点を上げるためにどんなことをしているのか、大臣、御存じでしょうか。今、現場では、学テ対策と銘打って、休み時間や放課後まで学力テストの過去問などをやらせています。
 八月二十六日付の中国新聞では、新学期が始まってもテスト対象となる小六は、四月下旬のテスト実施日まで前年度の復習をするのが年中行事になった、配られた真新しい教科書が学力テストの翌日まで一切使われず、机の中で眠ったままに、六年生の新学期はそんな光景が普通になった、また、校長から六年生だけ四月の家庭訪問を中止すると告げられ、校長は県教委から補習にはいい時期だと示唆され、従わざるを得なかったという、こうした現場の実態がリアルに紹介をされています。
 平均正答率が全国平均より上か下か、全国何位なのかに一喜一憂し、先生も子供たちもこんなことに何の意味があるのかと思いながら、何度も過去問をやらせて問題の解き方をたたき込むといったこうした学テ対策が、私は、むしろ子供たちの学習意欲を奪い、荒れにもつながりかねないという懸念すら感じています。
 趣旨そのもの、あり方そのものを問い直すべきだという声がさまざまなところから上がっている。平均点競争を激しくし、教育をゆがめてしまう全国学力テストはもうきっぱり廃止にすべきではないか。少なくとも、全員参加による毎年の悉皆調査という形態は来年度から直ちにやめるべきだ。全員を対象に毎年行うから、大阪のような、入試への活用も可能になってしまうし、地域別、学校別ランキングなどが行われて、過度な競争につながってしまう。
 教育指導の充実などに役立てるという理由だとしても、抽出調査で何年かに一回行うだけでも十分ではないか。そうしてこそ大阪のような事態も確実に防ぐことができると考えますが、いかがでしょうか。

○下村国務大臣 過度な、過当な競争は、これは是正すべきだと思いますが、全国学力テストは、国としては、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握、分析し、教育施策の改善充実に生かす、また、教育委員会としては、自治体や学校の学力水準を検証し、教育委員会の施策の改善充実に生かす、学校としては、個々の児童生徒の学習状況を把握して指導に生かすとともに、学校全体としての指導方法の検証、改善につなげることを目的として実施しているところであります。
 このように、それぞれ学校等の状況は毎年変わるものであり、学校における指導方法等の改善、個々の児童生徒の課題に応じた指導の充実や学習状況の改善を行うためには、毎年調査を実施することが適当であると考えます。
 特に、国語、算数・数学につきましては、日常生活やあらゆる学習の基礎となる内容を教える教科であることから、毎年調査を実施することが必要であると思います。
 また、抽出調査では一部の学校のみが対象となるため、市町村や抽出対象でない学校は全国平均と比較したみずからの教育状況について把握することができないことから、抽出でなく悉皆方式で行うことが重要であると考えておりまして、文科省としては、現在の方式で継続的に調査をしてまいりたいと考えております。

○大平委員 子供たち一人一人にどういう指導が必要なのかという問題は、誰に言われるまでもなく、今、学校の現場で、先生方御自身で考え、同学年の先生たちなどと話し合いながら日々考えておられます。そのことをもって、この全員調査を毎年やるという理由にならないと私は思います。
 全国学力テストは毎年約六十億円の予算が使われています。今こそ、一人一人の子供たちに目が行き届くように、このお金を教育条件の整備にこそかけるべきだということを求めて、私の質問を終わります。