エッセイ

2023年10月23日

赤旗日刊紙西日本のページ10月25日【水曜随想】大平喜信

稲刈りを終えた、秋の島根県邑南町へ。農民運動全国連合会(農民連)会長の長谷川敏郎さん宅へ訪問しました。農業・農村の実態や農政の課題について学ぶためです。

ただ、長谷川さんから何より教えられたのは農政の一つひとつの課題というよりも、私たちがどういう姿勢で農家の皆さんと向き合うのかという心構えについてでした。ズバリ日本の国土と食、つまり私たちの命と暮らしの土台を支えてきてくださったことへのリスペクトだと。

長谷川さんに問われました。「大平さん、日本の食料自給率は38%ですが、あなたが暮らす広島市の自給率はどのくらいかご存じですか」「わかりませんが、そんなに高くはないですよね」「2%です」「!」――驚いた私は、いかに〝食べることだけ〟にしか関心を持たずに人生を歩んできたかをあらためて突きつけられた思いになりました。今年8月に周南市八代で行われたつどいで、私がわかったように「価格保障と所得補償で…」と決まりきった〝対策〟を語るのに対し、参加された農家さんから「そんなことを聞くために来たんじゃない!」と怒られたことも思い出しました。

いま総選挙を前に私たちは「希望を語ろう!」をモットーにとりくんでいます。希望とは「ここに解決の道がある」という方策を知らせることがもちろん大事ですが、まず何より国民の苦しみや悲しみや怒りを聞き、それを我が事として受けとめ一緒に解決のためにたたかう、その決意を伝えることからなのではないかと、あらためて自らに言い聞かせる貴重な機会となりました。

「安倍さんの地元でも田畑はあちこち草ボーボーになっているではないか。何が『美しい国、日本』だ」(下関市)、「一年かけて育て、7月9日に収穫する予定で詰める箱まで用意していたところに、あの雨が降って全部ダメになった」(真備町)――農山村で汗や涙をぬぐい、それでもどっこい誇りを胸にがんばる農家さんの姿を思い出し、胸に刻み直しながら。