国会質問

2015年05月15日

国立大学の選別、再編・統合ストップ、運営費交付金の増額を(文科委員会)

189-衆-文部科学委員会-9号 平成27年05月15日

○大平委員 日本共産党の大平喜信です。
 独立行政法人大学評価・学位授与機構法の一部を改正する法律案に関連して、国立大学の運営費交付金の問題を中心に質問をいたします。
 四月十五日、産業競争力会議の課題別会合で安倍首相は、「この夏までに国立大学経営力戦略を策定し、三類型のミッション選択に基づく自己改c0349386_21053422革を進めていく。このため、運営費交付金と競争的資金の一体的改革を進めるとともに、外部資金の獲得や資産の運用を促進していく。」と表明しました。その日のNHKの報道でも、国立大学を三分類、首相が改革具体化指示と報道をしています。
 第三期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方に関する検討会、この中間まとめでは、機能強化の方向性を三つの類型から選択することを各国立大学に迫り、その方向性を踏まえた改革の取り組み状況を毎年評価し、資金を配分するとしています。
 お聞きしますが、安倍政権は、運営費交付金と競争的資金の一体的改革によって国立大学を三つに分類する、すなわち類型化をする方針なんでしょうか。

○下村国務大臣 四月十五日に開催された産業競争力会議の課題別会合におきまして、私の方から、第三期中期目標期間、これは平成二十八年から三十三年度でありますが、この期間において、各大学の機能強化の方向性に応じた取り組みをきめ細かく支援するため、運営費交付金の中に三つの重点支援の枠組みを新設し、評価に基づく配分を行う考えを表明いたしました。
 この三つの重点支援の枠組みは、第三期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方に関する検討会の中間まとめを踏まえたものでありまして、各国立大学が多様な機能や役割を担っていることや、新たな社会ニーズに適切に応えることが要請されていることを前提とした上で、各国立大学が、第三期において特に重点的に取り組む内容を踏まえ、みずからこのうちの一つを選択するものということでありまして、国が国立大学の機能や役割を限定するというものではございません。
    〔義家委員長代理退席、委員長着席〕

○大平委員 いわゆる類型化ではないという御答弁でした。
 しかし、重点支援されない分野を切り捨てるのではないかと思われる、そんな声が私はあちこちから聞こえてくるわけです。
 例えば、先ほどの十五日の産業競争力会議課題別会合では、議員の小林喜光氏から次のような発言がありました。「日本において、研究面での新しい発見がなくなってきていたり、動きが止まってしまっているような学問領域を思い切ってやめて、新しい領域、学際分野、例えばIoTを使ったような関連の領域を早く立ち上げるべきではないかと強く思う。」と発言をされています。
 また、あるいは日本経済団体連合会は、二〇一三年十二月十七日に出した「イノベーション創出に向けた国立大学の改革について」の中で、「今後の国立大学改革にとって重要な視点は、大学の数や規模を見直し、再編・統合を伴う本格的な「機能分化」を行うこと」と述べています。
 やはりこの三つの重点支援は、今あったように、再編統合を伴う本格的な機能分化につながるものではないのではないでしょうか。

○下村国務大臣 先ほど答弁いたしましたが、三つの重点支援の枠組み、これは、各国立大学が、それぞれの機能強化の方向性や、第三期を通じて特に重点的に取り組む内容を踏まえ、みずからこのうちの一つを選択し、国がそれに基づき重点支援を行うものということでありまして、国として国立大学を類型化しよう、そういう発想はありません。

○大平委員 あくまでも機能分化ではないとのお答えでした。
 そこで次の質問ですけれども、運営費交付金の総額をふやそうとしないままに重点支援を行えば、必然的に、どこかを削る、縮小することになると思います。大学の機能や役割を限定せずに、かつ重点支援をしようと思えば、運営費交付金を増額しなければできないと私は思います。
 この間、運営費交付金の削減をやめ、充実を求める声が全国各地に広がっています。各国立大学に設けられている経営協議会の学外委員が、交付金削減に反対し、財政支援を求める声明を今次々と発表しています。声明は、私の母校である広島大学を初め、北海道教育、東北、秋田、山形、福島、筑波、静岡、名古屋、福井、奈良教育、和歌山、山口、高知、宮崎の十五大学に広がっています。
 学外委員には、トヨタ自動車の会長、ファミリーマート会長など財界人を初め、有馬朗人、遠山敦子両元文部・文科大臣も名を連ねています。
 例えば名古屋大学の学外委員声明では、今後も基盤的経費の削減が続いていくならば、今後十年間で世界大学ランキングトップ百に日本の大学を十校以上などの目標達成は、国立大学の衰退とともに実現が困難になってくると痛烈に批判もして、その増額を求めています。
 大臣、この声に応えて運営費交付金の増額を明言すべきではないでしょうか。

○下村国務大臣 社会経済の高度化、複雑化、グローバル化が進む中で、国立大学は、新しい社会や産業に対応した自己改革を強力に進めていく必要があると思います。現状維持では、地盤沈下を社会も国立大学もしていってしまうと思います。
 このような取り組みを進めていく上でも、国立大学の多様な教育研究活動の基盤を支える国立大学法人運営費交付金の役割は、重要であるというふうに認識しております。
 現在、文科省におきましても、今後の運営費交付金のあり方を検討するとともに、これと並行して、研究成果を持続的に最大化することを目的として、競争的研究費改革、この検討も進めているところであります。
 文科省としては、運営費交付金とこの競争的研究費の改革を一体的に進めつつ、必要な予算確保に努めてまいりたいと考えておりますが、各国立大学の強み、特色を生かした教育研究を伸ばしていくために、また、喫緊の課題であります国立大学改革を強力に推進していくためにも、マネジメント改革による学長のリーダーシップの確立、各大学の強み、特色の最大化などの自己改革に積極的に取り組む国立大学に対しては、めり張りある重点配分をしてまいりたいと考えます。

○大平委員 やはり、運営費交付金の総額をふやすとは明言されませんでした。
 そのもとで重点支援をすれば、どこかを削らないといけないのは明らかであり、国立大学の機能や役割を国策に沿って限定し、類型化を進めるものとなってしまうことを、私、重ねて指摘したいと思います。
 さらに、運営費交付金の内訳、割合についてお聞きします。
 日本経団連は、「イノベーション創出に向けた国立大学の改革について」の中で、二〇一五年までに運営費交付金の競争的配分を三割から四割にし、第三期中期計画では、中長期的には全て競争的配分に移行することも検討するべきだということまで述べています。また、財政制度等審議会も、一般経費の三割を改革経費とし、三つの機能強化への重点配分に使うべきだと要求をしています。
 大臣、文部科学省も、運営費交付金の三割をとか、将来的には全て競争的配分に移行する、そんなお考えなのでしょうか。

○下村国務大臣 一般運営費交付金は教員の人件費を中心とした教育研究活動の基盤を支えているという基本的な性格を有しておりますので、経団連あるいは財政審などの提言のように、一般運営費交付金全体の三割程度を競争的に配分することは、これは国立大学の教育研究活動に重大な支障を及ぼしかねず、これは慎重に考える必要があると思います。
 先ほど答弁いたしましたが、現在、文科省においては、今後の運営費交付金のあり方を検討するとともに、これと並行して、研究成果を持続的に最大化することを目的として競争的研究費改革の検討も進めている。あわせて検討していきたいと思います。

○大平委員 和歌山大学前学長の山本健慈氏は、「地方国立大学 一学長の約束と挑戦」というこういう著書の中で、「「三割は、学長さんが使い勝手のいい予算として返すのですよ」といわれても、もともと法人化の出発点となる国立大学の財政構造が、学部・大学院教育に当たる教職員の雇用とその事業費だけで構成されてきたわけですから、返してもらっても本来の教育を中心とする事業が行えるだけで、改革の原資とはならないのです。そこで、「三割戻しても大改革をしていない」という評価で、そんな大学は退場してもらいますということに追い込まれていくと思います。まさに地方国立大学は「壊死」してしまう」と、もっともな訴えをされています。
 さらに驚くのは、五月十一日に行われた財政制度等審議会では、多様な収入源の確保を目指すべきだとして国立大学の授業料引き上げも検討することを求めていますが、文科省も、国立大学授業料の値上げについて検討すべきだとお考えでしょうか。

○下村国務大臣 国立大学の授業料につきましては、従来から、高等教育の機会提供という国立大学の役割等を踏まえつつ、大学教育を受ける者と受けない者との公平性の観点から、私立大学の授業料の水準など、社会経済情勢等を総合的に勘案して改定を行ってきたところであります。
 文科省としては、基本的にはできるだけ教育費負担をかけないようにしていくことが必要であるというふうに考えておりまして、意欲と能力のある学生等が経済的理由で進学等を断念することがないよう、安心して学ぶことができる環境の整備に努めてまいりたいと考えております。

○大平委員 基本的に教育費負担をかけないように、安心してという御答弁でした。
 授業料の問題は、私、今週水曜日の一般質疑でも取り上げましたが、国立大学の授業料は今でさえ世界一高い水準となっており、高学費に苦しむ学生たちの深刻な実態からも、政府自身が高等教育の漸進的無償化を定めた国際人権A規約第十三条二項(c)の留保を撤回したその国際公約からも、これ以上の学費の値上げは言語道断だと私は指摘したいと思います。
 運営費交付金の増額を初め、国の本来の責任を果たすべきだと重ねて申し上げまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。