日本政府の米軍言いなり姿勢を批判(5月18日外務委員会)
衆議院会議録情報 第190回国会 外務委員会 第15号
○大平委員 日本共産党の大平喜信です。
比例中国ブロックの選出、広島県の出身です。きょうは、外務委員会で初めて質問をさせていただきます。どうぞよろしくお願いをいたします。
まず、私は、核兵器廃絶の問題について質問したいと思います。
オバマ大統領が、アメリカ大統領として初めて被爆地広島を訪問することとなりました。これは被爆者の長年の切実な願いに応える重要な、前向きな一歩であると同時に、この一歩を核兵器のない世界の実現につなげるためには、米国政府が核兵器禁止条約の国際交渉開始に背を向けてきたこれまでの態度を改めることが必要であるということを私は率直に指摘したいと思います。
それは、昨年八月六日の広島市の平和宣言で、オバマ大統領ら各国為政者の被爆地訪問を求めて、各国為政者が、被爆者の思いを直接聞き被爆の実相に触れることで、核兵器禁止条約を含む法的枠組みの議論を始めなければならないという確信につながるはずだと述べているように、何よりも被爆者と被爆地が切実に願ってきたことであります。
岸田外務大臣にお伺いいたします。
米国政府のこれまでの姿勢についての大臣の御認識を伺いたいのと同時に、大臣にはオバマ大統領広島訪問の際にぜひこの被爆者の思いというものを伝えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○岸田国務大臣 まず、御質問は、米国政府の今日までの取り組みについてどう考えるかということがありました。
これにつきましては、オバマ大統領は、二〇〇九年にプラハ演説を行って、核兵器のない世界にコミットしました。これを踏まえて、新STARTを交渉締結し、あるいは核セキュリティーサミットを主導しました。そしてオバマ大統領は、二〇一三年にはベルリン演説におきまして、最大三分の一の配備戦略核弾頭の削減及び戦術核の大幅削減に向けたロシアとの交渉の推進を提唱しました。こうした取り組み自体は、まず、評価しています。
ただ、その後、国際情勢、米国とロシアとの対立の中で、核兵器のない世界に向けての機運が今しぼんでいる、こういった現実もあります。ぜひ、今回のオバマ大統領の広島訪問、これを一つの機会とし、再び国際社会において核兵器のない世界をつくっていこうという機運を盛り上げる、この反転攻勢に転ずる機会にしたいと強く思っています。
そして、我が国のこうした核軍縮・不拡散に対する対応ですが、こうした核軍縮・不拡散において結果を出すためには、核兵器を持っていない国が強い思いを述べる、もちろん重要ですが、核兵器を持っている国にも協力させないと結果につながらない、これも現実であると思います。この核兵器国と非核兵器国の協力がなければ結果を導くことができない、こういったことも強く感じております。
そういったことから、我が国はこれまで、核兵器の非人道性に対する正確な認識と、一方、厳しい国際社会における安全保障環境に対する冷静な認識、この二つの認識を持つことが重要であるということでこの議論に臨んできました。この正確な認識があるからこそ非核兵器国の理解も得られる、そして、冷静な認識があるからこそ核兵器国の協力も得られる、この二つの認識がそろうことが重要であるということで取り組んできました。このように、この二つの認識のもとに引き続き核兵器国と非核兵器国の協力を求めていきたいと思います。
そして、御指摘の核兵器禁止条約のあり方ですが、協力を実現する上において有効なのかどうか、こんなことも考えながら、どのような議論を進めていくのかを考えていかなければならないと私は考えます。
○大平委員 日本政府の姿勢は次の質問で聞こうと思ったんですけれども、大臣にまとめて答えていただきましたので飛ばします。
核兵器のない世界を実現するために、具体的に、とりわけ日米両政府がどのような行動を行っていくのか。米国は今までの態度を改める必要があるというふうに私は思いますし、あわせて問われているのは、今大臣に御答弁いただいた日本政府の姿勢だと思っております。
日本政府は、国連総会で圧倒的多数の賛成で採択されている核兵器禁止の国際交渉開始を求める決議案に対して、一九九六年に初めて提案されてから昨年の二〇一五年の総会に至るまで、二十年連続で棄権をしている。こうした姿勢を根本的に改めることこそ、私は日本政府に求められていると思いますし、大臣、先ほど、核保有国と非核保有国の協力を促していくという御答弁がありました。しかし、実際、私は、日本政府がやっていることは、専らアメリカなど核保有国が唱える核抑止力論でしたり段階的措置論を代弁するばかりではないかと感じずにはおられません。
もちろん核軍縮の個々の部分的措置を前進させることは重要ですが、そうした部分的措置の積み重ねだけでは核兵器のない世界には決して到達できないというのは、歴史と事実が示していることと思います。
広島市の平和宣言は、核兵器が存在する限りいつ誰が被爆者になるかわからない、こういう痛切な思いで核兵器の禁止、廃絶をうたっており、それこそが被爆地の最大の願いである。大臣も十分承知だと思います。
今こそ、こうした被爆者と被爆地の思いに応えて、そして圧倒的多数の国々も求める核兵器禁止条約など法的枠組みを構築するための国際交渉を開始するためのイニシアチブを日本政府がとることを強く求めて、次の質問に移りたいと思います。
ことし二月の予算委員会分科会で、私は米軍岩国基地の被害について岸田外務大臣に質問をさせていただきました。
私の地元中国地方では、岩国基地から飛び立った米軍機などによる低空飛行訓練が、島根県の西部から広島県の北部、岡山県北部、鳥取県の東部若桜町に至るまで、中国地方全体、山間地域を初め、また島根県西部の自衛隊訓練空域で激しく行われております。その爆音被害は、住民に耐えがたい苦痛を与えております。
きょうは、前回の質問でできなかった、どうしても看過できない具体的な事例について質問をさせていただきたいと思います。
二〇一五年の三月十七日正午ごろ、島根県川本町と邑南町の上空を、二機のジェット戦闘機が数度にわたって低空飛行を行いました。
川本町役場にある騒音測定器では、お昼の十二時十分から十二時三十四分までの間に計四回騒音を測定し、最大値は百一・四デシベル。邑南町役場では、十二時十七分から十二時二十六分までに計六回測定をし、最大九十三・二デシベルを観測しています。
地元の住民の方は、この日は特に低空飛行で、機体がはっきり見えるほどだったとおっしゃっておられました。
防衛省に確認ですが、この件について島根県から中四国防衛局に照会があったと思いますが、どういう対応、返答をしたんでしょうか。
○谷井政府参考人 お答えいたします。
昨年三月十七日、島根県川本町及び邑南町上空において航空機が飛行したことにつきましては、翌十八日に島根県から中国四国防衛局に苦情が寄せられました。防衛省といたしましては、これを受け、同月の二十日、米軍に対し苦情の内容を通知するとともに、飛行の有無の事実関係を問い合わせており、翌月七日、米軍から米軍機ではないとの回答があったことから、同日その旨を島根県に情報提供しております。
○大平委員 米軍が米軍機ではないと言ったから、独自に聴取をすることもなく、そのまま島根県に回答した、そういうことでした。
先ほど、川本町の最高観測値が百一・四デシベルだと紹介をしました。これは観測し始めてから二番目に高い数値であり、すさまじい爆音でした。
では、米軍機ではないとしたら、一体どこの飛行機なのかということになります。
続けて防衛省に伺いますが、では、この日、この時間にこの場所を自衛隊の戦闘機が飛んだという記録はありますか。
○笠原政府参考人 お答えいたします。
お尋ねの日時、場所におきまして、自衛隊機が飛行したという事実はございません。
○大平委員 米軍機でもなければ自衛隊機でもない、これは国籍不明機ということになります。
さらにお伺いしますが、この日、この時間に領空侵犯があったという記録はありますか。
○高橋(憲)政府参考人 お答えいたします。
先生御指摘の日時、場所において領空侵犯があったという事実はございません。
○大平委員 米軍機でも自衛隊機でもなく領空侵犯もなかった。そうすると、では、この時間、この地域で何も飛んでいない、防衛省はそういう認識なんでしょうか。
○谷井政府参考人 お答えいたします。
昨年の三月十七日の島根県川本町及び邑南町上空の航空機の飛行につきましては、先ほど御答弁いたしましたとおり、米軍からは米軍機ではない旨の回答があり、また、自衛隊機についても該当がなかったところでございます。防衛省といたしまして、これ以上のお答えをすることは困難だというふうに思います。
その上で申し上げますと、米軍機の飛行につきましては、防衛省として、日ごろより、米軍に対し、安全面に最大限の配慮を払うとともに地域住民に与える影響を最小限にとどめるよう働きかけているところでございまして、今後も働きかけを継続してまいりたいと思っております。
他方、米側としても、米軍機の飛行に際し安全面には最大限の配慮を払うとともに地域住民に与える影響を最小限にとどめるよう努力しているという旨を明らかにしております。
また、自衛隊機の飛行につきましても、地域住民に与える影響に十分配慮すべきことは言うまでもなく、基地周辺における飛行訓練を必要最小限の時間で行うなど、騒音を抑制するといった取り組みを実施してございます。
○大平委員 全く無責任な答弁であります。全く矛盾しているじゃありませんか。答弁しながら感じませんか、次長。米軍機でも自衛隊機でもなく領空侵犯もない。米軍が米軍機じゃないから、何か飛んだんだろうが何かはわからない。
私、伺いました。川本町では、保育所の園児たちが怖がって職員に抱きついて泣いたという苦情が寄せられておる。邑南町でも、議会中の質問や答弁が聞きにくかった、窓を閉め切った室内でも恐怖を感じたなど、苦情が寄せられております。こんなにも住民が不安や恐怖におびえている、平穏な生活が脅かされているのに、防衛省、あなたたちはまともに調べもせず、米軍が米軍機じゃないからといって、それをそのまま平気で現場に伝える。全く無責任きわまりない態度だと言わなければなりません。
では、米軍に聞く以外に確認をする手だてはないのかといえば、決してそんなことはない。質問を続けたいと思います。
防衛省は、米軍に問い合わせをするだけでなくて、自主的に調査をして米軍機が飛行する情報を受け取れるはずです。今回問題となっている島根県上空は、エリアQとエリア7という自衛隊の訓練空域ですが、米軍もここをエリア567という呼称で使っております。米軍機が使用する際は自衛隊と空域調整をすることになっていると思います。
そこで伺います。昨年の三月十七日に米軍と自衛隊は空域調整をしていますか。
○笠原政府参考人 お答えいたします。
今委員が言われましたように、一般的にでございますが、自衛隊の訓練試験空域を米軍が使用する際には、当該空域の使用の重複を避けるために、自衛隊の担当部隊が米軍と使用日時の事前調整を実施しているところでございます。
お尋ねの昨年三月十七日については、自衛隊訓練空域の使用について、米軍から調整が行われていたと承知をしております。
○大平委員 空域調整をしているという御答弁でした。しているということは、米軍機が飛んだ可能性が大いにあるということになると思います。
きょう配付資料を委員の皆様にお配りいたしました。一枚目をごらんいただきながら聞いていただきたいと思うんです。
我が国では、航空法に基づき、米軍機もフライトプランを日本政府に提出する義務があります。防衛省は、このフライトプランを飛行管理情報処理システム、FADPというシステムで管理していると説明を聞きました。防衛省は、このFADPで米軍のフライトプランも確認しているということであります。
配付資料の二枚目につけましたが、防衛省が監修する「マモル」という雑誌の二〇一二年四月号のコピーをつけました。ここではFADPの特集が組まれておりまして、そこには、見出しにあるとおり、「日本の空を飛ぶ航空機はすべて把握している!」と、大々的な見出しでその能力の高さを誇っております。
防衛省に確認ですが、今回問題の低空飛行について、自衛隊は米軍のフライトプランを当然受け取っておりますね。
○笠原政府参考人 お答えいたします。
飛行計画、フライトプランが提出されているか否かを含めまして、米軍機の運用にかかわることでございますので、お答えは差し控えさせていただきます。
○大平委員 防衛省は米軍のフライトプランを、航空法の仕組みから、そしてこの一枚目に配付した皆さんの管理システムの仕組みから、当然受け取っていると思うわけですが、米軍の運用については答えられないというお答えでありました。
しかし、この「マモル」にもあるように、防衛省として日本の空を飛ぶ航空機は全て把握していると皆さんはおっしゃっているではありませんか。
FADPは、領空侵犯にも対応するものだと私は聞いておりますが、領空侵犯もなかったと先ほど御答弁がありました。
これだけのシステムを導入して、米軍機も含めた全ての航空機の飛行を注視しておいて、しかし、米軍の運用に関しては答えられない、領空侵犯もない、でも飛行機は飛んでいて、どこの飛行機かわからないと。では、一体何なのか。こんないいかげんな対応は私はないと思いますよ。
配付資料の三枚目を皆さんごらんいただきたいと思います。
これは、私の地元広島を中心とする地方紙、中国新聞の昨年三月十八日付の記事のコピーを持ってまいりました。先ほど問題になっている十七日の翌日の記事でございます。ここに問題となっているジェット機の写真が、当社の記者が撮ったということで載っております。
この拡大図をつけてみました。このジェット機の尾翼に私には黒いシルエットが写っているように見えます。通告していないんですけれども、大臣、これは何に見えるでしょうか。
○岸田国務大臣 資料を見る限り、航空機、あるいはジェット機であるということは間違いないと思います。
○大平委員 尾翼に写っている黒いシルエットのことをお聞きしたんですけれども。
私はコウモリが羽を広げた姿に見えるわけですが、防衛省は、コウモリの印を持つ米軍の戦闘機があるかどうか、確認です、お答えください。
○谷井政府参考人 お答え申し上げます。
岩国に配備されておりますFA18ホーネットには、コウモリのような形のマークが入った尾翼のものがあるというふうには承知をしております。
○大平委員 私も調べてみましたら、米海兵隊岩国航空基地の第二四二全天候戦闘攻撃中隊が運用しているFA18Dという航空機がこの印をつけていると、岩国基地の公式ウエブサイトに載っておりました。私も手元にその戦闘機の写真を持っておりますが、まさにうり二つに見えるわけでございます。
これだけ情況証拠と物的証拠があり、そして米軍に真実を明らかにするよう迫ることができるにもかかわらず、米軍が米軍機ではないと言うから米軍機ではないと、そのまま日本政府として調査もせず現場に返す。そして、米軍機の運用だから答えられないと言う。米軍が黒と言えば黒で、白いものも黒と言えば黒になる。
日ごろから標的のように、島根県、広島県の住民の皆さんは被害を受けている。そうした人たちから見れば、加害者であるこの戦闘機が一体どこのものかもわからない、こんな答弁、こんな姿勢では、到底住民の皆さんは納得できるはずがありません。
大臣に改めてお伺いしたいんですが、こうした日米関係は、大臣、異常だとは思われませんか。いかがでしょうか。
○岸田国務大臣 まず、御指摘の昨年三月十七日の事案につきましては、先ほど来防衛省からも答弁がありましたとおり、事実関係が明確でないところがあると承知をしております。
ですので、一般論として申し上げますが、こうした騒音の問題、これはもう、地元住民の方々からすれば深刻な問題であります。
米軍の訓練ということで申し上げるならば、こうした訓練は、日米安全保障体制を維持していく、日米安全保障条約の目的を達成していく、こういったことにおいて重要であるとは認識をしておりますが、全く自由に飛行訓練を行ってよいというものでは当然ありません。
ぜひ、こうした地元住民の方々への影響について、安全面に最大限配慮を行いながら、影響を最小限にとどめるよう、我が国としてしっかり米側に働きかけていかなければいけない、これは当然のことであると考えます。
○大平委員 私は、日本政府の姿勢一つだと思いますよ。世界から見ても異常だと言わなければなりません。イタリア、ドイツでは、米軍機の自由な飛行訓練は決して許していない、明確な取り決めをしているのであります。要は、主権の問題であります。
国民の平穏な生活を踏みにじる、米軍機による傍若無人な飛行訓練は直ちに中止するよう求めて、私の質問を終わります。
ありがとうございました。